欧州の業界団体は6月1日、投資パフォーマンスの高いESG投資を実現していくためには、現在のEUサステナブルファイナンス開示規則(SFDR)の対象テーマ領域が狭すぎるため、サステナビリティに関連する他の領域もEUタクソノミーの対象に加えていく必要があるとの分析レポートを発表した。
今回のレポートを発表したのは、ドイツ投資ファンド協会BVI。BVIは、標準的なESGインテグレーション戦略を採用し、投資除外を最低限行ったポートフォリオは、従来のポートフォリオよりも高いパフォーマンスを発揮すると確認。しかし、現在のEUタクソノミーに基づき、EUサステナブルファイナンス開示規則(SFDR)で定義される「サステナブルファンド」は、ファンド全体の1%程度に留まると分析した。
原因は、タクソノミーの対象領域が狭すぎるため。まず、EUタクソノミーでは、「気候変動緩和」「気候変動適応」「持続可能な消費、水資源と海洋資源の保護」「サーキュラーエコノミーへの転換、廃棄物削減、リサイクル」「汚染防止と汚染管理」「健全な生態系の保全」の6つを対象領域としているが、現状、気候変動緩和と気候変動適応でしかSFDRで考慮されていない点や、タクソノミーが社会領域をカバーしていない。また、気候変動緩和と気候変動適応でも、二酸化炭素排出量の多いセクター向けに作られており、EUのマクロ経済価値の約半数、労働力の約3分の1を占めるセクターがカバーされていないことも大きいという。
同様に、SFDRに基づく開示をファンド開示を行うためには、各企業の収益、設備投資(CAPEX)と事業費用(OPEX)の詳細データを必要とするものの、EU域外の企業では開示が進んでいないことも障壁とした。EU域外企業に関しては、現在改訂中の新たなEU非財務情報開示指令で一部は対応できるものの、絶対的にデータが不足しているとした。
同レポートは、SFDRで定義される「サステナブルファンド」の割合を増やしていくためには、EUタクソノミーを継続的に発展させていく必要があると主張。現在は道半ばであることは理解しつつも、他の領域でのEUタクソノミーの策定の加速化を促した形。
【参考】【EU】欧州委、EUタクソノミー確定。ガスと原発は年内に最終判断。企業サステナビリティ報告指令も政策合意(2021年4月22日)
【参考】【EU】欧州監督機構、サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)のRTS最終案公表。考慮必須が13項目に減少(2021年2月8日)
【参照ページ】BVI study: Taxonomy alone does not provide a benchmark for fund sustainability
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