参議院は6月16日、国家安全保障上重要な土地等に係る取引等の規制等に関する法律案(土地利用規制法案)を賛成多数で可決。同法が成立した。国家安全保障上重要な土地の取引に関し、許可制や届出制が導入される。施行は、同法公布から6か月以内。
同法では、自衛隊や米軍の防衛施設、原子力施設等の国家安全保障上重要な施設の敷地及び周辺区域と、国境離島の区域の2つについて、国家安全保障上のリスクに基づき、特別注視区域と注視区域を指定。「周辺」に関しては1km圏内と定義する。
その上で、特別注視区域に対しては、取引時に当局への事前届出を義務化し、当局の判断で中止を命令できる。中止された場合には、国が買取ることができるスキームも整備した。加えて、政府による収用・使用が可能な制度も用意した。注視区域に対しては、取引の事後報告を義務付け、内容を把握する。特別注視区域も注視区域も、違反すると罰金等も科される。
また、特別注視区域と注視区域の周辺の土地の所有者について、首相が、関係行政機関の長や地方公共団体の長と連携して、地番及び地目、利用の実態に関する調査や、地積に関する測量を行うことができるとした。所有者に対し、関連情報の提供を求めることも可能となった。
同時に、同法では、施行後3年以内に、重要な水源を守るための土地の取引、利用等に関する規制等について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることも義務化した。
同法の背景には、2008年から、国境離島の対馬で韓国資本による自衛隊基地周辺土地の買収事案や、北海道で航空自衛隊も利用する新千歳空港の周辺土地の中国資本による買収が発覚。北海道では、水源の山林が中国資本に買収されていることが明らかとなり、安全保障上の懸念が高まっていた。
しかし、その後、12年間も立法ができなかったのは、国権による私権の制限やプライバシーに対する反発があったため。国会での法案審議では、公明党の交渉で「個人情報の保護に十分に配慮」「必要な最小限度のものとなるようにしなければならない」との規定が追加。また同様に公明党は、「経済的社会的観点から留意」するとの規定を加えさせた。これにより大都市の市街地にある自衛隊施設の場合、特別注視区域に該当しても注視区域として指定することが可能になり、土地所有者への負担軽減になったという。
【参照ページ】国家安全保障上重要な土地等に係る取引等の規制等に関する法律案
【参照ページ】公明「自由な取引」尊重を主張
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