Zホールディングスは6月11日、傘下のLINEで、データ処理を委託している中国のグループ企業で、ユーザーの暗号化済み個人情報にアクセスできるにようになっていた事案に関し、同社独立有識者委員会「グローバルなデータガバナンスに関する特別委員会」の第一次報告書の内容を発表した。その中で、LINEの説明に対し、利用者目線の欠如が依然として見られるとの大きな苦言を呈した。
【参考】【日本】個人情報保護委員会、LINEへの行政指導内容提示。違法性は現時点でなし(2021年4月26日)
【参考】【日本】LINE、中国グループ会社からの暗号化保護された個人情報アクセス認める。個人情報漏洩等は否定(2021年3月19日)
【参考】【日本】LINE、プライバシーポリシー改定。データ移転の記載を詳細化。「2つの国内化」も進める(2021年4月3日)
同委員会は、Zホールディングスとして、同社グループ全体のデータ取り扱いのセキュリティ及びガバナンスの観点からの有効性を検証・評価するために独自に設立したもの。座長は、宍戸常寿・東京大学大学院法学政治学研究科教授が務め、全員が社外有識者。別途、同様に全員が社外有識者の技術検証部会も設けられている。
今回の報告書の中で、特に、踏み込んだ見解を示したのが、LINEの今後の改善策に関する発表について。LINEは3月23日、「LINEのグローバルデータガバナンスの現状と今後の方針」というプレスリリースの中で、韓国のデータセンターに保管されているトーク内の画像・動画・ファイルデータの国内移転を2021年6月までに完了予定、タイムラインについてはLINE公式アカウントは22年6月、LINEユーザーは段階的に移転予定と説明していた。しかし、技術検証部会によるデータ移転計画の調査では、KEEPサービスについては2022年上半期、アルバムサービスについては、2024年上半期にデータ移転を計画していることが判明し、発表内容との食い違いがみられたという。
これに対し、同報告書では、「LINE社の説明は、社内の技術・サービスの建て付けに沿ったものであるとしても、通常のユーザーにはトークに関する画像・動画等が完全に日本国内に移転するものと受け止められるのが自然である。LINE社において、ユーザーファースト目線および正確な情報提供を目指す意識の欠如があったのではないか」と苦言を呈し、ガバナンスの改善を求めた。
同報告書の内容については、利用者に誤解を与える説明となっており、「利用者」には、LINEサービスを活用している地方自治体も含まれるとの考えから、一部メディアでは「行政に虚偽報告をした」と、センセーショナルに報道された。
これに関し、LINEは今回の報告書内容発表に先駆け、6月2日にあらためてプレスリリースを発表。「アルバムやKeepなどのストレージ機能はトークとは別個の機能であると考え、これまでのプレスリリースではトークで送受信されるデータの対象として、アルバムやKeepなどのデータを含めておりませんでした。そして、ユーザーの皆さまに最もご心配をおかけしていたトークで送受信される画像・動画・ファイルデータの国内移転を2021年6月末までに完了する旨だけをお知らせしており、アルバムやKeepなどのスケジュールについてはお伝えしておりませんでした」と説明した上で、対応に遅れがあるわけではないと伝えた。
LINEは今回の報告書発表を受けた6月11日にも、再度プレスリリースを発表。今後対策として「ユーザー目線でのアカウンタビリティ強化」を示した上で、「日本ユーザーの安心・安全のための取り組み進捗状況」と「安全管理措置等における改善状況」を公表した。データの国内移転スケジュールは6月2日の発表時から変更はない。
Zホールディングスの「グローバルなデータガバナンスに関する特別委員会」は、最終報告書を9月を目処にまとめる考え。
【参照ページ】「グローバルなデータガバナンスに関する特別委員会」第一次報告受領について
【参照ページ】アルバムやKeepなどのデータの国内移転スケジュールについて
【参照ページ】当社におけるデータガバナンスに係る改善策・取り組みの進捗についてのご報告
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