米連邦上院は6月8日、超党派の米国イノベーション・競争法(USICA)案(旧名・「エンドレス・フロンティア法案」)を、賛成38、反対32の賛成多数で可決した。中国のテクノロジー競争で勝つことを明確にし、技術開発に2022年度から2026年度までの5年間で総額2,500億米ドル(約27兆円)を拠出する。
同法案は、エンドレス・フロンティア法案として、前トランプ政権時の2020年4月にチャック・シューマー民主党連邦上院院内総務と、トッド・ヤング共和党連邦上院議員が超党派で提出。国際的な技術競争に勝ち、米国での雇用を創出するため、全米科学財団(NSF)に2022年度から2026年度までの中期予算として数百億米ドルを拠出しつつ、テクノロジー・イノベーション局を設置することを掲げていた。その後、1月にバイデン大統領が誕生して以降、サプライチェーン安定化や産業競争力に関する内容が大幅に盛り込まれ、予算規模が著しく増加。法案名称も「米国イノベーション・競争法案」に変更となった。
米国イノベーション・競争法案の内容は主に5つ。
- NSFにテクノロジー・イノベーション局を新設
- NSFに810億米ドルを拠出。そのうちテクノロジー・イノベーション局に290億米ドル
- 商務省は、全米に地域テクノロジー・ハブを指定。ハブ運営に5年間で100億米ドル
- 半導体の研究、設計、製造に527億米ドル
- 5Gイノベーションに15億米ドル
- 航空宇宙局(NASA)の有人着陸システムに100億米ドル
また、NSFでの強化分野としては10領域が指定されている。
- AI(人工知能)、機械学習、オートノミー及び関連分野
- ハイパフォーマンスコンピューティング、半導体、高度ハードウェアとソフトウェア
- 量子コンピューター
- ロボット工学、自動化、高度製造
- 高度通信技術とイマーシブ・テクノロジー(没入型技術)
- 自然災害・人為的災害の予防・軽減
- バイオテクノロジー、医療技術、ゲノミクス、合成生物学
- データストレージ、データ管理、分散型元帳テクノロジー、バイオメトリクス等のサイバーセキュリティ
- 高度エネルギー、電池等の産業効率技術、発電等での高度な原子力技術
- コンポジット等の高度な素材化学、2D材料
さらに同法案では、中国に政治的に対抗するための予算も盛り込まれている。具体的に、国務省が香港の民主主義を促進するために1,000万米ドル、ウイグル人やその他のイスラム教徒の少数派に対する強制労働、強制中絶、不妊手術等の人権侵害に対しる中国への制裁、北京での2022年冬季オリンピックの外交ボイコット、中国当局に汚職に関する報告、2022年までの時限立法となっているグローバル・マグニツキー人権説明責任法のサンセット(期限満了失効)条項の撤廃等。
また、イノベーション関連予算についても、中国の軍事組織の参加の禁止、連邦通信委員会(FTC)が中国政府の影響の多い事業体への建設や放送局設置の許可付与禁止、孔子学院との協定を維持している高等教育機関への資金提供の禁止も盛り込み、中国対抗を明確にした。
同法案は、今後、連邦下院での審議に移る。バイデン大統領は歓迎している。中国政府は即、同法案への反発声明を出した。
【参照ページ】S.1260 – THE UNITED STATES INNOVATION AND COMPETITION ACT
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