高級アパレル世界大手仏LVMHモエ ヘネシー・ルイヴィトンは6月3日、同社の新たな環境戦略「LIFE 360」を発表し、「水」「土壌」「大気」の3分野の保全を強化すると表明した。同コミットメントは、EUのゼロ汚染アクションプランに整合させた。バリューチェーン全体で環境アクションを進める。
【参考】【EU】欧州委、ゼロ汚染アクションプラン策定。2030年までの汚染ゼロ中期目標設定(2021年6月8日)
水分野では、バリューチェーン全体での水消費量削減や廃水での水質汚染ゼロにコミットする。すでに同社ブランドおよび既製服・レザー・靴サプライヤーは、アパレル業界大手等で構成するグループ「有害化学物質排出ゼロ(ZDHC)」に加盟している。また、同社工場やサプライヤーからの廃水について2023年までには、取引量の大きいサプライヤー上位30社を対象に監査を実施する。
さらに英スコットランドにある同社グレンモーレンジィ醸造所では、2017年に廃水処理プラントを建設。廃水処理過程で生成したバイオガスを醸造所で活用し、化石燃料消費量を13%、天然有機物の流出を95%削減した。
海洋汚染については、海洋プラスチックごみを課題視。2026年までには包装での化石燃料由来バージンプラスチックの使用を停止する。すでに同社香水ブランド「セフォラ」では包装にバイオプラスチックを活用している。
土壌保全では、素材の品質や土壌への二酸化炭素貯蔵量を向上。2030年までに葡萄、コットン、ウール等の全ての原材料調達で、リジェネラティブ農業を採用する。モエヘネシーでは、土壌保全プロジェクト「Living Soils, Living Together」を展開。仏農業省の環境価値重視認定「HVE」や「持続可能なブドウ栽培(VDC)」、「コニャック環境認証(CEC)」等の取得を進めている。
また同社は、2020年末までにシャンパン製造用の全葡萄農園で除草剤使用を停止。同社ブランド「ヘネシー」でも、2021年には自社ワイン農園へ、2028年にはサプライヤーのワイン農園で除草剤使用を停止する。さらに「ヘネシー」と「ルイナール」は2021年、環境保護推進NGO「Reforest’Action」と協働し、生物多様性保全プロジェクトを展開。森林管理をしながら、その森林の中で家畜の飼育や農作物の栽培を行うアグロフォレストリーを実施する。
大気では、工場の操業や輸送での二酸化炭素排出を課題視。小売店舗1m2あたりのエネルギー消費量を30%削減をすでに達成。2030年までに50%削減を目指し、特に電源構成で石炭火力発電の割合の大きい国を中心にエネルギー消費量削減を進める。また現在同社使用電力の39%を占める再生可能エネルギーについては、2026年までに100%まで引き上げる。
輸送での二酸化炭素排出量では、仏海運Neolineの帆船輸送を活用し、同排出量を90%削減。同社ブランド「セフォラ」では、2012年からフランスでの陸上輸送に電気自動車(EV)を活用。イタリア、中国、米国でも同様のアクションを進めている。
また同社ブランド「セリーヌ」では、空輸を減らし、陸上輸送と海運中心へ転換。包装での資源消費量も削減した。「ルイヴィトン」では、物流での環境インパクト削減のため、ISO14001の更新と、包括的な輸送ポリシーの策定、物流パートナー企業への同ポリシーの浸透等に取り組んだ。
さらに同社は5月28日、サーキュラーエコノミーの実現に向けたコミットメントも発表した。2023年までに商品の修繕やリサイクルサービスを強化し、2026年までには包装での化石燃料由来バージンプラスチックの使用を停止。2030年までには、新たに製造する全商品でエコデザインを採用すると宣言した。
同社は既に、複数ブランドでサーキュラーエコノミー化を進めている。「ルイヴィトン」ではアップサイクルに焦点を当てた新スニーカー「LVトレイナー・アップサイクリング」を販売。また「セリーヌ」「ロエベ」「ベルルッティ」では、レザーの端切れのリサイクルを実施。「ヘネシー」では、エコデザインの採用を進めている。
同社はその他にも、オープンイノベーション・プログラム「DARE」の一環として、アパレル素材のデッドストックのリセールプラットフォーム「Nona Source」を発足。駆け出しのスタイリストやブランドを対象に、生地やレザーを手頃な価格で提供する。
【参照ページ】LVMH focuses on environmental commitments during EU Green Week 2021
【参照ページ】LVMH presents commitment to circular economy at ChangeNOW Summit
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