国際エネルギー機関(IEA)は5月5日、銅、リチウム、コバルト、ニッケル、レアアースの重要鉱物の需要見通しを示した上で、将来に向けた提言を発表した。IEAは2020年10月、「世界エネルギー見通し2020」を発表し、世界のエネルギー転換の中で、特定の鉱物資源需要が大幅に増加するとの見解を表明。今回具体的な分析結果を示した。
【参考】【国際】IEA、「世界エネルギー見通し2020」発表。新型コロナでの環境変化受け、新たに4シナリオ提示(2020年10月21日)
銅、リチウム、コバルト、ニッケル、レアアースの需要が急増する背景は、再生可能エネルギー発電機、EVバッテリー、蓄電施設の影響。IEAは今回、複数のモデリングツールを基に、気候変動の各シナリオと、11の技術深化経路を組み合わせ、データベースを構築した。
分析の結果、電気自動車(EV)製造は、従来の自動車製造の6倍の鉱物資源を必要とし、陸上風力発電製造は同規模のガス火力発電製造よりも9倍の鉱物資源が必要と伝えた。エネルギー転換により、再生可能エネルギー発電機、EVバッテリー、蓄電施設の需要は2040年までに現状の6倍にも増加。リチウムの需要は42倍にもなる。
(出所)IEA
また、重要鉱物資源の採掘地は、現在の化石燃料とは状況が一変する。特に、加工に関しては中国依存が顕著になっており、サプライチェーンの多様化も欠かせなくなってきている。
IEAは、今回の分析結果を受け、「投資誘致」「イノベーション」「リサイクルの向上」「サプライチェーンのレジリエンスと市場の透明性の確保」「環境・社会基準の厳格化」「国際協力の強化」の6つを提言した。
今回のIEAの発表に対し、英環境シンクタンクNGOカーボントラッカーは5月10日、「電気自動車(EV)製造は、従来の自動車製造の6倍の鉱物資源を必要とし、陸上風力発電製造は同規模のガス火力発電製造よりも9倍の鉱物資源が必要」について、製造時のみの資源消費量での比較を強調すべきではなく、使用時も含めて伝えなければ、ミスリードとなると反論した。
IEAは別途、5月11日、再生可能エネルギー市場の最新報告書「Renewable Energy Market Update 2021」も発行。2020年には、新型コロナウイルス・パンデミックによるロックダウン等があったにもかかわらず、再生可能エネルギー設備容量は世界全体で45%も増加し、280GWにも到達。IEAの当初予測の25%増を大幅に上回った。280GWは、ASEAN10ヶ国の設備容量と同等の規模。増加率は1999年以来最大。さらに今後、2021年に約270GW、2022年には約280GWの設備容量が増加する見通し。
またIEAは5月3日、クリンゲンダール国際エネルギープログラム(CEIP)との合同レポート「北西ヨーロッパの水素: 2030年に向けたビジョン」を発表。水素エコノミーを加速させる政策をより強力に打ち出せば、2030年までのカーボンフリー水素の生産量をさらに3分の1引き上げ、水素生産全体に占めるカーボンフリー水素の割合を現在の10%から50%以上へと拡大できるとの見通しを示した。
CEIPとの合同レポートは、クリーンエネルギー大臣会合(CEM)の場で、2020年に発足した北西ヨーロッパ諸国の政府間対話会合がIEAに依頼したもの。提言としては、北西ヨーロッパ地域での未利用ポテンシャルの探求、統合地域市場の開発、水素バリューチェーン全体での支援スキーム、水素生産の脱炭素化の同時検討の4つを示した。
【参照ページ】Clean energy demand for critical minerals set to soar as the world pursues net zero goals
【参照ページ】Mineral constraints for transition overstated by IEA
【参照ページ】Renewables are stronger than ever as they power through the pandemic
【参照ページ】Cooperation between North-West European countries is needed to scale up low-carbon hydrogen in the region
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