エネルギー世界大手米エクソンモービルは5月26日、定時株主総会を開催。同社取締役会側から12人の取締役選任候補が提出されたのに対し、株主の投資会社Engine No.1からは4人の候補が提出。そのうち2人以上が選任されるという波乱が起こった。同社は2020年、二酸化炭素排出量の削減に消極的な声明を発表しており、多くの株主側Engine No.1の提案を支持した形。エクソンモービルにとっては大きな敗北となった。
Engine No. 1は2020年12月、エクソンモービルに対し、二酸化炭素排出量を大胆に削減する企業方針を掲げることとともに、独自の取締役選任候補を擁立したことを伝える書簡を送付。そこから双方の間で、議論の応酬が続いていた。エクソンモービル側は、パリ協定に基づき、スコープ1とスコープ2の大胆な削減目標を設定していることに対しては、Engine No.1はスコープ3での削減目標が必要と主張した。
【参考】【アメリカ】エクソンモービル、スコープ3排出量開示も「無意味」と一蹴。ガス販売強化(2021年1月18日)
【参考】【アメリカ】エクソンモービル、CO2削減策でCCS導入重視姿勢を鮮明に。逃げ切り図る(2021年2月20日)
またエクソンモービルは、Engine No.1は、石油・ガス事業への投資削減を主張し、将来のキャッシュフローと配当金水準を悪化させていると訴えたが、Engine No.1は、エクソンモービルは収益性の低い事業に投資をしようとしており、事業ポートフォリオを転換すべきと伝えていた。
さらにエクソンモービルが発表していた炭素回収・貯留(CCS)技術への大規模投資について、Engine No.1は、CCSそのものは否定しないが、石油需要が減衰すればCCSにすがっても事態は解決しないと疑問を呈していた。
このようにエクソンモービルは、必死の抵抗を示し、株主総会でも数時間をかけて、候補者の説明や質疑応答が展開された。しかし結果は惨敗。Engine No.1が提案した取締役選任候補のGregory J. Goff元アンデバーCEOと、Kaisa Hietala元ネステ再生可能エネルギー事業担当副社長が勝利。Alexander KarsnerグーグルX(現社名X)シニアストラテジストもまだ結果未判明。Anders Runevad元ヴェスタスCEOのみは敗退が決まった。エクソンモービル提案側は8人が当選。現在の残りの席については慎重な開票作業が続いている。
取締役選任決議では、ブラックロック、バンガード、ステート・ストリート、カリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)、カリフォルニア州教職員退職年金基金(CalSTRS)、ニューヨーク州年金基金、リーガル&ゼネラル・インベストメント・マネジメント(LGIM)が、Engine No.1側を支持したことが判明している。議決権行使助言大手もEngine No. 1側を支持していた。
さらに同株主総会では、同社のロビー活動に関する2つの株主提案も提出されており、同社取締役会側は反対を推奨していたが、双方可決した。可決された1つ目は、全米鉄鋼労組(USW)の提案で、直接及び間接双方のロビー活動について、方針と支出額、取締役会と経営陣の意思決定プロセスや監督内容の情報開示。もう1つは、BNPパリバ・アセット・マネジメントの提案で、ロビー活動がパリ協定との整合性があるか否かの情報開示。
[2021.6.4追記]
Engine No.1が提案した取締役選任候補Alexander Karsnerも当選が決まり、同社の推薦候補3人の取締役が誕生した。
【参照ページ】REENERGIZE EXXON
【参照ページ】ExxonMobil announces preliminary results in election of directors
【参照ページ】Notice of 2021 Annual Meeting and Proxy Statement
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