アジア開発銀行(ADB)は5月7日、ADBのファイナンス事業に関する「エネルギー方針案」を公表した。パブリックコメントを募集し、エネルギー方針を最終化する。その中で、21世紀半ばまでの石炭火力発電の段階的廃止を打ち出したことが注目を集めている。
今回のエネルギー方針は、発展途上国を多く抱えるアジア太平洋地域でのエネルギーアクセスやエネルギー安全保障の問題を解決しつつ、同時に気候変動に対処していくためのADBの考え方を整理したもの。ADBは2009年から2019年まででエネルギーセクターに425億米ドル(約450億円)ファイナンスしており、アジアのエネルギー生産増に深く関与してきた国際開発金融機関。ADBが協調融資をすることで成立してきたプロジェクト案件も多く、ADBのエネルギー方針は、アジア太平洋のエネルギー政策に大きな影響を与える。
今回ADBは、アジアでは、化石燃料によるエネルギー供給で、経済発展やエネルギーアクセス確保を遂げてきたことを踏まえつつ、一方で化石燃料への依存継続は、経済発展が今後見込まれるアジア太平洋地域では気候変動につながってしまい、気候変動に脆弱なアジア太平洋地域のコミュニティに打撃を与えると指摘。化石燃料消費と経済成長及びエネルギーアクセスを「デカップリング」させることが必要とした。
その中で、石炭については、21世紀中頃までにスピード感をもって段階的に廃止する戦略的な脱炭素化ポリシーを掲げた。一方、ガスについては、化石燃料として二酸化炭素排出量を排出するものの、アジア太平洋地域では石炭からガスへの転換で削減を狙う向きも強く、今回のエネルギー方針では、石炭だけに対象を絞った。
原子力発電については、ADBは投資していると指摘した。理由は、電源の低炭素化には寄与するが、市民の承諾、核拡散リスク、核廃棄物処理、安全性、高い投資コスト、建設完了までの長い納期等。そのためADBは、今後アジア太平洋地域では原子力発電を支持する強い需要は出てこないと見立てた。
そこでADBとして、アジア太平洋地域のエネルギーアクセス確保のためには、再生可能エネルギーが最有力の選択肢として大きく掲げた。
【参照ページ】Energy Policy Supporting Low Carbon Transition in Asia and the Pacific
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