米ジョー・バイデン大統領は5月20日、気候関連財務リスクに関する大統領令に署名。連邦政府の各部局に対し、対策強化の検討を命じた。気候変動の物理的リスクと移行リスクが、企業や投資家、コミュニティ、労働者にとってのリスクとなる一方、脱炭素化の転換は米国の競争力と経済成長を強化し、給与水準の高い雇用機会ももたらすとした。
同大統領令では、ブライアン・ディーズ国家経済会議(NEC)委員長とジーナ・マッカーシー気候変動問題担当大統領補佐官に対し、ジャネット・イエレン財務長官及びシャランダ・ヤング行政管理予算局(OMB)局長代行と協力して、120日以内に、包括的な政府全体の戦略を策定するよう命じた。具体的には、連邦政府の政策や資産、負債が抱えるリスク、資金調達の必要性、マイノリティへの影響等を指摘した。
またイエレン財務長官に対しては、金融安定監視委員会(FSOC)の議長として、FSOCのメンバーと協力し、政府と経済・金融のリスク評価やリスク対策強化政策検討を命じた。具体的には、まず、連邦政府と米国金融システムの安定性の評価。そして、気候関連禁輸リスクデータの政府機関間での共有。さらに、財務省規制対象企業の気候関連情報開示を強化するための行動の必要性や推奨事項計画や、金融監督でのアプローチや導入課題、米国の金融安定上のリスクを特定するプロセス等について、180日以内に大統領に報告するよう命じた。さらに、FSOCの年次の連邦議会報告に気候関連財務リスクの評価を加えることや、保険会社を対象とした監督と規制上の課題も洗い出すよう命じた。
労働長官に対しては、1974年従業員退職所得保障法(エリサ法)や1986年連邦従業員退職制度法で定める年金の気候変動リスクからの保護、前トランプ政権時代に導入されたフィデューシャリーデューティー(受託者責任)に関する規則等の停止、修正、廃止等を2021年9月までに発表することを命じた。
連邦政府機関による貸付、保険、政府調達に関しても、対策強化を命じた。まず、OMB局長代行と国家経済会議委員長は、財務長官と連携し、連邦政府からの貸付等に関連する金融リスクの財務報告と財務マネジメントを検討する。連邦調達規制会議は、主要サプライヤーに、二酸化炭素排出量と気候関連財務リスクの開示、科学的根拠に基づく削減目標設置を要求するとともに、二酸化炭素排出量要素を調達条件に加える。農務長官、住宅都市開発長官、退役軍人長官は、気候関連の金融リスクを引受基準、貸付条件、資産管理およびサービス手続きに統合するためのアプローチを検討する
【参照ページ】Executive Order on Climate-Related Financial Risk
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