EU上院の役割を担う加盟国閣僚級のEU理事会とEU下院の役割を担う欧州議会は4月26日、カーボンニュートラル(二酸化炭素ネット排出量)型の産業転換で著しい悪影響を受ける地域を支援する「公共セクター・ローン・ファシリティ(PSLF)」で、欧州委員会の提案内容について政治的合意に達した。これにより、「ジャスト・トランジション・メカニズム(JTM)」の全内容で合意した。今後、公式的なEU規則の制定手続きに入り、2021年後半にもPSLFの第1弾内容が発表される。
ジャスト・トランジション・メカニズムは、欧州グリーンディール政策の一環として、欧州委員会が2020年5月に提案。同メカニズムは、PSLFの他、2020年12月に合意に達したジャスト・トランジション・ファンド(JTF)と、2021年3月に合意に達したInvestEUを通じた支援プログラムの全3本で構成されている。
JTMは、各加盟国がカーボンニュートラルで悪影響を受ける地域を特定し準備をすすめるための「Territorial Just Transition Plans(TJTP)」を策定することが肝となる。地域特定では、国内の関係者とともに欧州委員会とも対話の上、確定。政治的な恣意的操作を避けるため、EUが各国に義務付けている「国家エネルギー・気候計画」との整合性を求められる。最終的にTJTPは欧州委員会が決定する。
PSLFは、政策融資のため、赤字プログラムとなり、他の財源からの手当が必要となる。そこで今回、EU予算から15億ユーロ(約2,000億円)の財政支出、欧州投資銀行(EIB)からの100億ユーロ(約1.3兆円)のローンで資金を確保する。運営では、InvestEUの下に諮問会議を組成し、支援対象者へのアドバイス役を務める。PJLFからの資金供給は、今後7年間で250億ユーロ(約3.2兆円)から300億ユーロ(約4兆円)規模を目指す。将来的には民間金融機関からの資金調達も検討することを示唆した。
融資条件には、基本的人権の尊重、ジェンダー平等、差別禁止、社会・環境保護等の基準も設ける。また、EUが掲げる「Do no significant harm(DNSH)原則」も適用する。発展途上国の加盟国には、融資とともに最大25%の無償援助も付け、技術支援も行う。
【参照ページ】Commission welcomes the political agreement on the proposal for a Public Sector Loan Facility of the Just Transition Mechanism
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