飲料世界大手米モルソン・クアーズは4月22日、ビール生産の発酵過程で排出される二酸化炭素を回収・再利用することで、コスト削減を実現したと発表した。
ビール製造では、酵母による糖の発酵過程で二酸化炭素が排出される。同社は、排出された二酸化炭素を回収し、浄化してから液体として貯蔵。缶や瓶への注入工程で再度気化させ、炭酸ガスとして利用している。缶や瓶への二酸化炭素注入は、一般的にも実施される工程。容器内の酸素を押し出し、炭酸ガスや香りが空気と接触し、包装の匂いの付着や劣化を防ぐ効果がある。同社は今回、炭酸ガスを購入するのではなく、醸造過程で排出される二酸化炭素の再利用で賄うことに成功した。
二酸化炭素の調達価格は、新型コロナウイルス・パンデミックや異常気象で、飲料用のエタノール生産が減少により、大幅に上昇。同社醸造所の多くでは、製造時に必要な二酸化炭素需要の70%から80%を、醸造工程で生成できており、コスト削減にも繋がっているという。
また同社は、醸造過程で排出されるメタンガスにも着目。米バージニア州エルクトンのシェナンドー醸造所では、醸造過程で排出された廃棄物から、年間電力需要の6分の1相当の電力を生成している。年間の設備容量は1MW。
同社はその他にも、アクションを並行。英国では4月、ビールブランド「モルソン・カナディアン」および「カーリング」で、缶をひとまとめにするためのプラスチックリングの使用を停止。リサイクル可能な紙製包装に変更した。
また同月、英国の主要醸造所として初めて、主要電力を再生可能エネルギーに転換。同社の事業活動からの二酸化炭素排出量を、2025年までに50%削減する目標も、2021年には達成見込みだという。
3月には、Encircと協働で同社ビールブランド「スタロプラメン」を対象に、リサイクルした再生素材含有量を高めたガラス瓶の実証も発表。二酸化炭素排出量を90%削減できる見込み。
【参考】【イギリス】ハイネケンやモルソン・クアーズ、ガラス瓶のサーキュラー化進む。カールスバーグに続く(2021年3月18日)
さらに米国では同月、テキサス州のトリニティ川保護イニシアチブ「Texas Water Action Collaborative」の創設メンバーとして加盟。初となる米農務省(USDA)認証のオーガニック・ビール「Coors Pure」や、米国の河川の保全を理念に置くビールブランド「Coors Seltzer」等をリリースした。2020年には、北米拠点での包装の99%を、リサイクル可能または再利用可能なものに切り替えた。
【参照ページ】For Molson Coors, recycling carbon dioxide has environmental and financial benefits
【画像】Molson Coors
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