欧州委員会は4月21日、サステナブルファイナンス・アクションプランに関する複数の施策を採択した。内容は、EUタクソノミー、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)、サステナブルファイナンスに関するもの。今後、各々の施策について法令化に向けた次の段階に入る。
今回採択された一つは、EUタクソノミーを法制化するためのEUタクソノミー委託法令。委託法令は、政令のように欧州委員会のレベルで発行できる。今後、EU諸言語での翻訳を行った後に、正式に採択。4ヶ月以内にEU理事会と欧州議会から異議がなければ自動的に発行する。
EUタクソノミーでは今回、原子力発電のガス火力発電の扱いが大きな焦点となった。今回のEUタクソノミーでは、原子力発電とガス火力発電に関しては、議論が途中としてタクソノミーには盛り込まれなかったが、EUタクソノミーは常に改定していくものという前提をおいた上で、今後、最終判断を下すとした。
特に、原子力発電に関しては、2020年3月の専門家会合(TEG)報告の段階では、二酸化炭素排出量削減に資するもののタクソノミーの文脈だけで判断するには難しいと立場を保留。その後、欧州委員会は、EUの合同研究センター(JRC)に分析を要請し、現在も分析協議は継続中。しかし3月にリークされたドキュメントには、JRCは原子力発電を他の電源と比べて相対的に害が大きくはないとする判定でまとまりつつあることを伝えていた。現在JRCでの分析は、欧州原子力共同体(EURATOM)の第31条専門家グループと、健康・環境・新興リスク科学委員会の双方で行われており、6月には結果がまとめる見通し。
ガスについては、「まだEUタクソノミーの中に含めるとも除外するとも決めていない」と発表。パブリックコメント募集の中で、ガスについては非常に多様な意見があったことを明らかにした上で、適切な形で2020年後半に決議する委託法令改定で対応する意思を示した。ガスについては、石炭や石油からシフトさせることで二酸化炭素排出量を削減できることは認めつつ、EUタクソノミーのクライテリアに適合する範囲内でトランジションとしての適格性を認めると伝えた。
2つ目の企業サステナビリティ報告指令(CSRD)は、現行の非財務情報開示指令(NFRD)を改定する案で、大企業に対し、財務情報開示と同等にサステナビリティ報告を行うルールを課す。義務対象企業は、現在のNFRDの11,000社から、50,000社へと一気に拡大する。また、中小企業向けにも自主的にサステナビリティ報告を行うためのスタンダードも開発する。複数乱立しているESG報告スタンダードを俯瞰し、「ワン・ストップ・ショップ」のスタンダードを策定を目指すという。CSRDに関しては、今後の法制化に向け、EU理事会と欧州議会との協議に入る。
サステナブルファイナンスでは、委託法令を6つ改正することを決定した。具体的には、投資会社や保険会社が投資助言する場合には、受益者とサステナビリティ性向について議論し、それに基づくアセスメントをすることを義務化。また、金融機関は、受託者責任(フィデューシャリー・デューティー)の一環として、サステナビリティリスクを評価する際の義務内容も明確にした。運用会社には、金融商品を設計する際にサステナビリティファクターを校了することも義務付けた。6つの改正は、今後、EU理事会と欧州議会の異議がなければ、2022年10月から施行される。
[2021年6月16日追記]
EUタクソノミー委託法令は、6月4日に正式に採択され、成立した。
【参照ページ】Sustainable Finance and EU Taxonomy: Commission takes further steps to channel money towards sustainable activities
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