国際環境シンクタンクNGOのクライメート・アクション・トラッカー(CAT)は3月、日本向けに1.5℃目標整合性のある二酸化炭素排出量削減シナリオを提示した3月発表レポート「日本の1.5°Cベンチマーク ~ 2030 年温暖化対策目標改定への示唆~」を発表。このほど日本語レポートも発表された。構成機関であるる国際科学者シンクタンクClimate AnalyticsとNewClimate Instituteが分析した。
同レポートは、日本政府が2020年10月に、2050年までの二酸化炭素ネット排出量ゼロ(カーボンニュートラル)を発表したことに伴い発表されたもの。目下、日本政府としては2030年までの中間目標設定に苦慮しているが、同レポートでは、1.5℃目標と整合性のある2030年中間目標は、2013年比62%減と算出。パリ協定下で提出している2013年比26%減から大幅に引き上げる必要があると言及した。この算出ロジックでは、日本政府は2040年には2013年度比82%減が求められる。
今回の分析は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の1.5℃シナリオデータベースに報告されている総合評価モデル(IAM)のシナリオを活用。1.5℃と整合する国レベルの排出曲線の分析を実施した。活用されているシナリオは、世界で一律のカーボンプライシングが適用された場合の排出経路となっている。また、土地利用での二酸化炭素吸収とBECCSは、持続可能な範囲に保守的に見積もられた。但し、責任や負担能力などの公平性指標は考慮されておらず、突発的な異常気象年が発生することがない「オーバーシュートなし」モデルを採用しているため、先進国には算出された以上の削減が実際には求められるという。
目標達成するためには、2030年度の電源構成は、再生可能エネルギー比率60%以上が必要と見積もった。石炭火力発電は2030年までに全廃、ガス火力発電も2050年までに全廃とした。原子力発電は、訴訟や安全性規制、新設でも長期的な時間がかかることから、極めて不確実性が高いとし、CCUSを前提とした火力発電は、具体的な設置計画がなく、フィージビリティが薄いとの見方を示した。
運輸部門に関しては、世界全体で2035年までにガソリン・ディーゼル車を完全に廃止する必要があると分析。廃止車両にはハイブリッド車(HV)とプラグイン・ハイブリッド車(PHV)も含まれる。
産業部門では、世界レベルで2030年までに生産量1トン当たりの二酸化炭素排出量を製鉄では25%から30%、セメントは40%削減する必要があるとした。
同様の分析では、米国の2030年目標は、2005年比57%から63%減となっている。
【レポート】日本の1.5°Cベンチマーク~ 2030 年温暖化対策目標改定への示唆~
【参照ページ】1.5°C-consistent benchmarks for enhancing Japan’s 2030 climate target
【参照ページ】1.5°C-consistent benchmarks for the US 2030 climate target
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