中国の国家市場監督管理総局(SAMR)は4月10日、競争法の観点から、中国のEコマース市場で優越的地位の濫用を行ったと判断し、アリババ・グループ・ホールディングに対し、182億人民元(約3,050億円)の罰金を命じた。アリババ側は全面的に受け入れる意思を示す書簡を公表した。
今回の行政処分は、中国の競争法史上異例の規模の罰金額となった。世界的に行われているITプラットフォーマーに対する競争法上の監督強化の動きということもできる。また、国家市場監督管理総局の州市場監督管理総局は2020年12月にアリババに対する調査を開始しており、わずか4ヶ月での調査結果判断というスピード決定となった。
今回、国家市場監督管理総局は、アリババグループは中国のEコマース市場で支配的な地位を占めていると判断。2015年以降、アリババ・グループは、優越的地位を乱用し、プラットフォーム上の加盟店に「2つの選択肢から1つ(二選一)」の要件を課し、プラットフォーム上の加盟店が出店したり、他の競争力のあるプラットフォームでのプロモーション活動に参加したりすることを禁止し、市場支配力を利用している行為が、中国競争法(反壟断法)第17条第1項第(4)項の禁止行為に該当すると判断した。
罰金額は、中国競争法第47条及び第49条に基づき、2019年の中国国内売上高4,557億1,200万人民元の4%として算出。結果、182億人民元となった。同法では売上の最大10%の罰金が科せられるが4%に留めた。同時に、「行政指導法」に従い、アリババグループに「行政指導」が出され、プラットフォーム企業の主な責任を厳格に実施し、内部統制を強化することも義務付けられた。同社は、今後3年間、内部統制、コンプライアンス、公正な競争環境の維持、プラットフォームでの国内企業と消費者の保護等に関するレポートを州市場監督管理総局に提出しなければならない。
これに対し、アリババ・グループは、「今日はアリババグループの発展にとって重要な日となった。私たちは今回の件を新たな出発点と位置付け、問題に真摯に向き合い、革新することを決意する。政府の監督とあらゆる分野からの批判、寛容、支援は、アリババの成長の鍵となる。そのため、私たちは感謝とともに畏敬の念を表する。顧客第一で、社会のために長期的な価値を継続的に創造する良い会社であることは、私たちの本来の意図であるだけでなく、私たちの存在と発展の最大の重要性でもある。私たちはこれに自信を持っており、決して揺らぐことはない」と表明した。
また、中国人民銀行、中国銀行監督管理委員会、中国証券監督管理委員会、国家外貨管理局の合同チームは4月12日、アント・グループに対しても、競争法上の観点から同社と協議している是正措置の内容を初めて明らかにした。
中国では、政府がアント・グループの上場を中止させたことが話題を呼んでいたが、今回、4機関の合同チームは、2020年12月からアント・グループとの協議を開始していることを明らかにした。これまでにアント・グループ側に要求している是正措置は全部で5つ。まず、電子決済サービス「Alipay」と同社の「花唄」「借唄」等の他のサービスとの組み合わせの切断。他社サービスを不当に排除していることを批判した。
2つ目は、個人信用調査サービスで、情報独占の禁止、プライバシーの保護、国家情報安全保障の3つの観点から「信用調査業界管理規則」の遵守。3つ目は、アント・グループが申請している金融持株会社において、傘下の事業会社全ての内部統制、リスクマネジメント、業界規範の受諾。4つ目は、健全性監督の要件を厳格に実施し、コーポレートガバナンスを改善し、信用、保険、ウェルスマネジメントなどの違法な金融活動を是正し、高レバレッジとリスクの伝染を防止すること。そして5つ目は、主要なファンド商品の流動性リスクの低減で、これにより余額宝の残高が低減されたという。
今回の当局は、アント・グループに対し、フィンテックの分野でも、同様に金融規制の対象であることを明確にした上で、フィンテックという新事業を積極的に支援していく考えを示した。またアリババと同様にアント・グループに対しても、プラットフォーマー規制を強化する立場もみせた。
【参照ページ】市场监管总局依法对阿里巴巴集团控股有限公司在中国境内网络零售平台服务市场实施"二选一"垄断行为作出行政处罚
【参照ページ】阿里巴巴公开信:今天是公司发展历程中至关重要的一天
【参照ページ】中国人民银行副行长潘功胜就金融管理部门再次约谈蚂蚁集团情况答记者问
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