ドイツのスベ―ニャ・シュルツェ連邦環境・自然保護・原子炉安全相は3月11日、ドイツでの脱原発を完了するための12項目のアクションプランを発表した。ドイツでは、福島第一原子力発電所後に脱原発政策を定め、2022年までに原子力発電の廃止を決定している。今回のアクションプランでは廃止後も見据えた計画を示した。
今回のシュルツェ大臣は、ドイツ政府の計画は、ドイツでの脱原発を完了することに留まらず、次は欧州全体、最終的には世界全体での脱原発を進めることと明言。今回示した12項目でも、国際的に脱原発政策を推進していくことを明確にした。
12項目の内容では、まず、ドイツ国内では、最終的に残っているリンゲンとグローナウの原子力発電所を閉鎖し、さらに石炭火力発電を再生可能エネルギーに転換していくことを標榜。その上で、すでに排出してしまっている高レベル放射性廃棄物の処分を可能な限り最高水準の安全性で実行するとともに、市民に情報を伝えた上で市民との連携もうたった。
また、国際的には、まず欧州各国に対し、ドイツの脱原発と足並みを揃えるよう促していくと表明。特に、EU各国政府が国営の原子力発電所を新設することに関しては「ドイツの利益にも、気候変動対策やエネルギー転換の利益にもならない」と言及。原子力発電は、二酸化炭素排出量は少ないが、放射性廃棄物の問題から「クリーン」とは呼べず、フォローアップ費用は莫大であり、将来の世代に負担をかけるため、再生可能エネルギーの方が遥かに重要との見方を強調した。
さらに、原子力発電所を一般的な耐用年数の40年を越えて使い続けるところが欧州でも今後増えてくることについて、EU各国での使用延長を断固拒否する考えを強調した。さらに、ドイツが議長国だったEU理事会は2020年12月、エスポー条約に基づき、耐用年数の延長に関しては、越境環境影響アセスメント(EIA)の実施を義務付けることにも成功しており、スイス、英国、ウクライナ、ベラルーシ等の非EU加盟国にも同規定を適用できるようにしていることから、この枠組を通じて、耐用年数延長を封じ込めていく政策も披露した。また、EUや世界各国が、原子力発電に対し、公的資金を投入することを禁止していく政策も打ち出した。
また、次世代型と目される原発技術の一つである小型モジュール炉(SMR)についても反対の立場を鮮明にした。SMRは、原発のサイズは小さくなるが、核廃棄物の問題は依然として改善されず、さらに小型化することで管理やサプライチェーンが複雑化していくことを問題視した。但し、ドイツとしては、原子力に関する研究能力は保有し続ける必要があるとした。
【参照ページ】Ten years after Fukushima: Germany's commitment to phasing out nuclear power continues
【参照ページ】12 Punkte für die Vollendung des Atomausstiegs
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