機関投資家大手94機関が参加する低炭素経済推進イニシアチブ「Transition Pathway Initiative(TPI)」は2月17日、鉄鋼、アルミニウム、セメント、資源採掘、製紙の5業界の上場企業111社の気候変動対策レベルを分析した結果を発表した。また、化学業界を加えた6業界の大手169社について、気候変動マネジメントの質についても分析した。
【参考】【国際】機関投資家イニシアチブTPI、鉄鋼、アルミ、セメント、製紙の4業界気候対応分析。日本大手低迷(2020年2月7日)
【参考】【国際】機関投資家団体TPI、資源採掘大手10社のスコープ3のCO2排出量で手法開発。分析結果公表(2020年5月16日)
同イニシアチブは2017年1月発足。英国環境保護庁年金基金と英国国教会National Investing Bodiesが主導し、多くの機関投資家が参加。現在の運用資産総額は23.6兆米ドル(約2,500兆円)。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のグランサム研究所がバックアップしている。
今回分析の6業界は、世界の二酸化炭素排出量の25%を占める。今回の分析では、2℃目標と整合性のある二酸化炭素排出量削減目標を設定している企業は分析対象111社のうち、わずか16社しかないことがわかった。一方で、6社は気候変動ガバナンスの質で最高位「レベル4*」を獲得した。
5業界の対象企業111社の業界内訳は、鉄鋼29社、アルミニウム19社、セメント33社、資源採掘13社、製紙23社。特に状況が悪いのがアルミニウムと製紙。その反面、鉄鋼は率先して対策する企業が増えてきている。
鉄鋼業界は、2℃未満の目標を掲げているのは、アルセロール・ミタル、ポスコ、ティッセンクルップ、フェストアルピーネ、Acerinoxの5社。日本企業では、JFEホールディングスと大同特殊鋼は、現代製鉄と同じく、パリ協定での各国目標レベルに留まっており、日本製鉄と神戸製鋼所、日本製鋼所は、中国鋼鉄と同じく「パリ協定との整合性なし」と厳しい評価。大和工業は「未開示」だった。
鉄鋼業界の気候変動マネジメントの質では、アルセロール・ミタル、タタ・スチール、SSAB、日本製鋼所、フェストアルピーネ、Acerinoxがレベル4を獲得。日本製鉄はレベル3、JFEホールディングス、神戸製鋼所、日本製鋼所がレベル2、大和工業、日立金属、大同特殊鋼がレベル1だった。
アルミニウム業界は、2℃未満の目標を掲げているのは、リオ・ティントのみ。日本企業では丸紅と住友化学が未開示。マネジメントの質では、リオ・ティントと住友化学がレベル4を獲得。丸紅、昭和電工、日本軽金属がレベル3、三井物産、UACJがレベル2だった。
セメント業界では、2℃未満目標を掲げているのは、セメックス、CRH、太平洋セメント、ダルミア・バーラト、ハイデルベルク・セメントの5社。マネジメントの質では、セメックスやラファージュホルシム、CRH等5社がレベル4を獲得。日本企業では、太平洋セメントがレベル3、住友大阪セメントがレベル2。
資源採掘業界では、グレンコア、フリーポート・マクモラン、グルポメヒコ、ノリリスク・ニッケルの4社が2℃未満目標を設定。マネジメントの質では、アングロ・アメリカン、BHP、ヴァーレが最高位レベル4*を獲得。リオ・ティントとテック・リソーシズがレベル4。
製紙業界では、2℃未満目標の設定企業がゼロ。マネジメントの質では、クラビンが最高レベル4*。日本企業では、王子製紙がレベル4、日本製紙がレベル2、大王製紙と北越製紙、特種東海製紙がレベル1。
化学業界は、マネジメントの質の分析のみで、最高位レベル4*獲得は、エア・リキード。レベル4は、ジボダン、IFF、LG化学、DSM、サソール、信越化学、東レ。日本企業では他に、旭化成、三菱ケミカルホールディングス、日本ペイント、日東電工がレベル3だった。
【参照ページ】AS WE ENTER TRANSITION DECADE NEW RESEARCH FINDS ONLY 14% OF HEAVY INDUSTRY IS ALIGNED WITH PARIS AGREEMENT
【参照ページ】Management Quality and Carbon Performance of Industrials and Materials Companies: February 2021
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