米食品大手タイソン・フーズは2月11日、株主総会を開催。その中で、人権デューデリジェンス(HRDD)のプロセスに関する報告書を同社の取締役会に要求する株主提案に関する決議があり、同社創業家のTyson Limited Partnership以外の独立株主の78.7%が賛成票を投じた。株主全体では18.4%の賛成にとどまり否決されたが、主要な機関投資家が多数賛成に回ったことが大きな関心を集めた。
今回の株主提案は、American Baptist Home Mission Societyが主導し、その他22機関との共同提案の形をとった。背景には、タイソン・フーズは、英人権NGOのKnowTheChainが実施している強制労働問題への対応状況ランキング「Food and Beverage Benchmark」で非常にスコアが低く、強制労働リスク対策が不十分と判断されたことが大きい。また2020年7月には、新型コロナウイルス・パンデミック下での従業員への感染予防策が不十分だという非難も、人権NGOから出されていた。
【参考】【国際】KnowTheChain、食品43社の強制労働対応ランキング2020。日本大手3社は下位に低迷(2020年10月15日)
同社の議決権では、創業家のTyson Limited Partnershipが種類株式を保有しており、株主保有比率以上に議決権行使保有比率が大きく、全体の71%の議決権を持っている。同社取締役会は今回の議案に反対するよう推奨していた。しかし今回、独立株主の多くが議案に賛成票を投じた。
賛成を表明した機関投資家は、ブラックロックやバンガード。またノルウェー公的年金基金のGPFGやカリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)も議案に賛同するとの事前告知をしていた。
さらに同社が、議決権行使の結果を、株主総会の場では公表せず、2月17日に法定開示書類の中で初めて明らかにしたことについても、透明性にかけるとの批判が集まった。
ブラックロックやGPFGが、1月にはマレーシア消費財メーカーTop Gloveの株主総会でも、取締役選任決議で全ての取締役の選任議案で反対票を投じている。Top Gloveは、新型コロナウイルス・パンデミックで需要が急増した医療用手袋等を生産しているが、2020年11月に社員寮で新型コロナウイルスの集団感染が発生し、従業員の4分の3以上が感染した。株主総会では、カリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)も社内取締役の選任について反対票を投じた。
【参照ページ】Tyson Dismisses Shareholders’ Human Rights Concerns At Annual Meeting
【参照ページ】The Tyson Foods AGM: an example of how shareholder transparency on voting on social issues matters
【株主提案】Report on Human Rights Due Diligence 2021 – Tyson Foods
【結果】Form 8-K
【参照ページ】120+ Organizations Target Tyson Foods for Failing to Protect Workers from COVID-19
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