石油ガス世界大手蘭ロイヤル・ダッチ・シェルは2月11日、二酸化炭素ネット排出量ゼロ(カーボンニュートラル)、株主価値の創出、生活と自然環境へインパクト考慮を両立させる経営ビジョン「Powering Progress」の具体的アクションを発表した。その中で、同社の二酸化炭素排出量の総量は2018年にピークアウトし、石油生産でも2019年にピークアウトしたとの認識を示した。エネルギー大手で総量での削減姿勢を明らかにしたのは同社が初。
今回の発表では、まず2050年までに製品使用のスコープ3も含めたカーボンニュートラルを実現するための道筋として、2023年までに2016年比で6%から8%減、2030年までに同20%減、2035年までに同45%減、2050年までにゼロとする短期・中期目標も設定。その上で、達成状況を、従業員16,500人の給与と連動させる方針を表明した。
同目標の実現に向けては、2035年までに炭素回収・貯留(CCS)で2,500万tの炭素吸収も行うとした。現在同社は、カナダのクエストでCCSプロジェクトが進められており、新たにノルウェーのノーザンライツと、オランダのポルトスでも展開を計画している。これら3ヶ所で合計450万tの年間吸収量を持つ。同時に、自然を基盤としたソリューション(NBS)も活用し、2030年までに年間1.2億tの削減を図る。削減量については外部監査も受ける。
さらに2021年の定時株主総会から、同社のエネルギー転換計画について株主承認を得るための議案を提出する。同様の施策はエネルギー大手で初。また3年毎に転換計画を見直し、同様に株主総会にかける。二酸化炭素排出量の削減では、科学的根拠に基づく削減目標イニシアチブ(SBTi)、Transition Pathway Initiative(TPI)等と業界のスタンダード作りを進める。
他方、株主価値創出では、毎年の配当を4%ずつ増加させる方針を示し、取締役会にかけるとした。年間の設備投資額は年間190億米ドル(約2兆円)から220億米ドル(約2.3兆円)に設定。ネット・デットは650億米ドルにまで圧縮する。
この双方の目標を実現するため、同社は事業構造の転換も図る。まず石油・ガス販売では、同社は世界中に100万以上の顧客を持ち、ガソリンスタンドだけで46,000ヶ所を保有し、3,000万人以上にガソリン・ディーゼルを供給しているが、同事業としての収益性を高めつつ、2025年までにガソリンスタンドの数を55,000にまで拡大し、4,000万人にガソリン・ディーゼルを供給する規模拡大を継続する。
それと同時に、将来にエネルギー転換に向け、年間30億米ドルを投資。2025年までに電気自動車(EV)充電ステーションの数を現在の6万ヶ所から50万ヶ所にまで拡大。また、潤滑油事業も2025ン円までに利益を60万米ドルにまで拡大する。バイオマス燃料は、2019年100億lの販売実績があり、特にブラジルのさとうきび由来のバイオディーゼルを手掛ける合弁会社Raízenは、今後生産能力を50%増強し、年間37.5億l体制にする。年率では約3%の伸びとなる。
発電事業では、年間20億米ドルから30億米ドルを投資し、2030年までに現在の約2倍となる年間560TWhの発電量を目標とする。そのうち再生可能エネルギー発電の増強も掲げたが、560TWhのうち何割を再生可能エネルギーが占めるかは不明。水素でも、ゼロエミッション型の水素生産で世界の10%以上のシェアを目標として設定した。
液化天然ガス(LNG)では、年間40億米ドルを投資し、2025年中旬まで年間700万t以上の新規生産設備確保を目指す。カーボンニュートラルLNGも視野に入れる。石油精製は縮小し、現行の世界13拠点から6拠点にまで縮減。ガソリン・ディーゼルの伝統的燃料の生産量は2030年までに55%幅引き下げる。一方、化成品事業には年間40億米ドルから50億米ドルを投資し、強化。2030年までに追加で10億米ドルから20億米ドルのキャッシュ創出を狙う。その中には、サーキュラーエコノミー型の廃プラスチック・リサイクルも含まれ、2025年までにプラスチック廃棄物のリサイクル量を年間100万t体制に持っていく。
石油ガスの上流事業では、権益売却や自然減等により、年間で石油生産量を1%から2%削減。2030年まで収益性は高める。上流への投資額は年間80億米ドル。
【参照ページ】Shell accelerates drive for net-zero emissions with customer-first strategy
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