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【国際】化学大手、プラスチック・リサイクル増強。新興国でも。ケミカルリサイクルが大規模化

 化学大手各社が、事業のサーキュラーエコノミー化に向け、リサイクル企業との連携やリサイクル工場建設を強化してきている。すでに流れは先進国だけでなく、新興国にも波及。ケミカルリサイクル勢力の規模の経済追求の姿勢も目立ってきた。

 石油化学世界大手サウジ基礎産業公社(SABIC)と英ケミカルリサイクルPlastic Energyは1月21日、合弁会社SPEARを設立し、オランダ・シッタートヘレーンにケミカルリサイクル工場を建設すると発表した。SPEARの出資比率は、両社50%ずつ。オランダ経済省からの補助金も得る。同工場は、2022年第2四半期に稼働開始予定。

 両社は2019年から、認証済み再生ポリマーの製造・商品化に取り組んできた。今回発表の新設工場により、天然資源の保全と大幅増産が可能になる。同工場のケミカルリサイクルでは、低品質で、異物が混在した使用済みプラスチックをモノマーにまで還元。従来の石油由来原料の代替として、再生ポリマーを生成する。

 また、米化学大手イーストマン・ケミカルは1月29日、世界最大級のケミカルリサイクル工場を米テネシー州キンクズポートに設立すると発表した。同工場は、2022年末に完成予定。2025年までにプラスチック11万tを、2030年までに、同23万t以上をリサイクルする。

 同社は今後2年間、世界の廃棄物問題と気候変動に伴う課題の最小化に向け、同工場の建設に2.5億米ドル(約265億円)を投じる。同工場のケミカルリサイクルでは、エステル交換反応を活用。エステル交換反応とは、エステルとメタノールを反応させた際に、主鎖部分が入れ替わる反応のこと。同社は、30年間にわたりエステル交換反応を研究し、商業規模でケミカルリサイクルを行う先駆者的存在。

 ケミカルリサイクルでは、マテリアルリサイクルでのリサイクルが困難だったプラスチックごみ10万tがリサイクル可能になる。二酸化炭素排出量も、化石燃料由来のバージンプラスチック製造と比べ、20%から30%削減できる。

 一方、マテリアルリサイクルの動きも同時に大きくなっている。化学世界大手米ダウとインドのリサイクル企業Lucro Plastecycleは2月10日、インドの使用済みプラスチックを活用し、ポリエチレン(PE)フィルム素材にマテリアルリサイクルする覚書(MOU)を締結した。

 今回のアクションは、2030年までに廃プラスチック100万tの回収・再利用・リサイク目標の達成に向けたダウの取り組みの一環。同社は、Lucro Plastecycleに対し、素材化学とアプリケーション開発技術を提供する。Lucro Plastecycleは、ダウが回収した廃プラスチックを、マテリアルリサイクル。再生プラスチックとバージンプラスチックを組み合わせ、フィルム構造の開発と製造を行う。

 同ポリエチレンフィルムは、飲料容器、缶、液体カートン等の二次包装で活用。バージンプラスチックと比べ、二酸化炭素排出量を削減できる他、インドにおける海洋プラスチックごみの解決にも寄与する。

 Lucro Plastecycleは、インド企業で初めて、南アジアおよび東南アジアの海洋プラスチックごみ防止に取り組むシンガポールの投資ファンド「サーキュレート・キャピタルズ・オーシャン・ファンド(CCOF)」から資金を調達。使用済みプラスチック調達の強化等、事業成長を加速する。

 プラスチックの需要企業では、再生プラスチックの活用も加速している。独消費財大手ヘンケルは2月8日、トイレ掃除用品の主力ブランド「Biff」等でのプラスチック容器での再生プラスチック含有量が50%に達したと公表。また、環境ブランド「Pro Nature」では含有量を75%にまで引き上げた。プラスチックの使用料そのものも11%削減し、年間でのバージンプラスチック消費量は480t減少する。年間二酸化炭素排出量削減量は800t。

 アパレル大手イケアは2月3日、アパレルのポリエステル繊維を全て、再生ポリエステルに変換する目標を2020年末に達成したと発表。これにより、同社の店頭に並ぶポリエステル繊維の商品は、全て再生素材となった。バージンプラスチック削減量は年間10万tで、二酸化炭素排出量は45%減で年間15万t削減。同社は、2030年までには全ての化石燃料由来の原料を、再生素材に転換することを目標としている。

 タイヤ世界大手仏ミシュランは2月9日、スウェーデンEnviroと協働で、チリのアントファガスタに同社初のタイヤ・リサイクル工場を建設すると発表。Enviroは、廃タイヤをカーボン、油脂、鉄、ガスを回収する技術を持つケミカルリサイクル技術企業で、今回の工場では年間3万tの廃タイヤをリサイクルする。回収量はチリ全体の廃タイヤの60%にも及ぶ。建設着工は2021年で2023年には稼働開始予定。ミシュランは同工場に3,000万米ドル(約31億円)を投資する。同工場では、廃タイヤのうち90%の資源を回収し、タイヤ、ベルトコンベヤー、衝撃吸収材のゴム素材にアップサイクルする。残りの10%はエネルギー回収に活用する。

 他にも、プラスチック素材から紙素材への包装・容器転換で事業体制を強化する動きもある。OEM生産大手ジェイビル1月14日、米カリフォルニア州の紙製容器・包装Ecologic Brandsを買収したと発表。Ecologic Brandsは、すでにロレアルやSeventh Generation等を顧客に持ち、支持を集めている。

【参照ページ】Dow and Lucro to launch post-consumer recycled (PCR) polyethylene film solution in India with investment from Circulate Capital
【参照ページ】SABIC AND PLASTIC ENERGY SET TO START CONSTRUCTION OF PIONEERING ADVANCED RECYCLING UNIT TO INCREASE PRODUCTION OF CERTIFIED CIRCULAR POLYMERS
【参照ページ】Eastman and Governor Lee Announce World-Scale Plastic-to-Plastic Molecular Recycling Facility to be Built in Kingsport, Tenn.
【参照ページ】New packaging for toilet cleaners: less plastic and more recycled material
【参照ページ】IKEA accelerates transformation towards recycled polyester
【参照ページ】Michelin launches construction on its first tire recycling plant in the world
【参照ページ】Jabil Bolsters Sustainable Packaging Capabilities with Acquisition of Ecologic Brands

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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