グリーン水素
グリーン水素とは、水を電気分解し、水素と酸素に還元することで生産される水素のことです。この水素を利用し、酸素を大気中に放出することで、環境への悪影響を与えずに水素を利用することができます。電気分解を実現するためには電気が必要ですが、それには電力が必要です。グリーン水素を作るためのプロセスは、風力や太陽光などの再生可能エネルギーを利用することで副産物としての二酸化炭素を排出させることなく、水素を製造することができます。
ブルー水素
ブルー水素とは、天然ガスや石炭等の化石燃料を、蒸気メタン改質(Steam Methane Reforming)や自動熱分解(Autothermal Reforming)などで水素と二酸化炭素に分解し、二酸化炭素を大気排出する前に回収する方法です。二酸化炭素を回収することで、グリーン水素と同様に、温室効果をゼロにすることができます。
この回収方法は、カーボン・キャプチャー・ユーズド・アンド・ストレージ(Carbon Capture Used and Storage)と呼ばれるプロセスを経て行われます。
グリーン水素 vs ブルー水素
将来の水素エコノミーを実現する上で、グリーン水素とブルー水素のどちらを優先的に扱うかは、コストの面で比較されることが一般的です。
グリーン水素とブルー水素のコストを比較した研究では、グリーン水素の方がブルー水素よりもかなり高価であることがわかっています。それは、再生可能エネルギーを利用して水から水素を製造するプロセスである電気分解のコストが原因です。具体的には、電気分解によって生成された水素(グリーン水素)は、その生成に使用される電気よりも常に高価であるのに対し、天然ガスは電気に変換するよりも大幅に低いコストで水素に変換できるからです。世界の電気分解能力は限られているうえ、水素の生産量が増えると明らかにグリーン水素のコストがブルー水素より高くなります。
但し、グリーン水素製造コストは、2015年から2020年までに40%低下しており、2025年までにさらに40%低下すると予想されています。そのうえ、業界の専門家の多くは、電気分解能力を大幅に増やせば、今後10年間で約70%のコスト削減になるとも予想しています。そのため、すでにEUでは、ブルー水素を行わず、グリーン水素を普及させることを政策として掲げています。
他の水素
グレー水素:水素を生産するプロセスはブルー水素と同様ですが、ブルー水素と異なり、二酸化炭素を回収せずそのまま大気中に放出する手法です。この方法では、残念ながら水素の生産過程で気候変動を引き起こしてしまいます。2020年時点で、現在世界で生産されている水素のうちグレー水素が約95%を占めています。しかし、気候変動に対応するための水素エコノミーに向けては、グレー水素は禁止されていく方向にあります。
イエロー水素:グリーン水素と同様に水の電気分解によって生産されますが、原子力発電を利用しています。
今後の課題
グリーン水素は、現状では生産能力でもコスト競争力でも課題を抱えていますが、2050年までに世界経済がネットゼロエミッションを達成し、世界の気温上昇を 1.5℃に抑えるために不可欠な要素になると見られています。
ゴールドマン・サックスによれば、グリーン水素は2050年までに世界のエネルギー需要の25%を供給し、2050年までに10兆米ドルの市場になると見立てています。すでに、オーストラリア、チリ、ドイツ、EU、日本、ニュージーランド、ポルトガル、スペイン、韓国、米国等、多くの国が水素の国家戦略を発表しています。
グリーン水素製造への投資は、再生可能エネルギーと電気分解技術の両方のコストが低下し、政府が支援策を導入することで、2023年までに年間10億米ドルを超えるようです。RBCキャピタルマーケッツのアナリストであるBiraj Borkhataria氏は、炭素回収技術を用いたブルー水素は今後10年間の成長分野になる可能性が高く、再生可能エネルギーから製造されるグリーン水素は2030年以降に意味を持つようになるだろうと述べています。
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