2021年に開始する予定の自然関連財務開示タスクフォース(TNFD)は、企業や金融機関が自然への依存度や影響を評価、管理、報告するための枠組みを検討するための国際イニシアチブです。自然関連のリスクを測定し、世界の資金フローを自然環境に対してポジティブにしていくことを目指しています。
歴史
2020年9月25日、62の金融機関、企業、政府、規制機関、シンクタンクが、自然関連金融開示タスクフォース(TNFD)に取り組むための「非公式作業部会」(IWG)を創設しました。現在、IWGによって正式な発足準備が進められています。運営は、国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)、国連開発計画(UNDP)、グローバル・キャノピー、世界自然保護基金(WWF)の4団体で、金融機関が発足を強く支持しました。
TNFDは、気候関連の財務開示に関するタスクフォース(TCFD)が、気候変動の分野での情報開示フレームワーク構築に成功したことを受け、より幅広く自然環境全体に関する情報開示フレームワークの確立を目指しています。但し、TCFDが、G20からの指示を受け、金融安定理事会(FSB)内のイニシアチブとして発足したという、政府主導で発足が進められたという経緯とは異なり、TNFDは完全に自発的に民間主導で立ち上がりました。
TNFDは、2021年初頭に発足し、2022年末までに自然と生物多様性関連の開示のためのフレームワークとガイドラインを発行する予定です。
なぜTNFDが必要か
自然喪失は世界的な緊急事態です。人類はすでに野生の哺乳類の83%、植物の半分を絶滅させ、陸地の75%と海洋環境の65%を大きく変えてしまいました。気候変動による生物多様性の損失は、生態系の回復力に影響を与え、負のスパイラルに陥っています。新型コロナウイルス・パンデミックは、自然関連のリスクが気候リスクよりも早く経済に影響を与え、あらゆる分野に影響を与えうるという事実を強調しています。
例えば、世界経済フォーラム(WEF)は、世界のGDPの50%以上に相当する44兆米ドルの経済価値生成が、中程度または高度に自然に依存していると推定しています。WEFの2つのレポート「Nature Risk Rising」と「Global Risks Report 2020」は、自然に依存したリスクの規模の増大を浮き彫りにしています。
何もしないことによるリスクは計り知れません。しかし、行動から得られる機会も同様に大きなものです。世界経済フォーラムによると、自然を肯定的なものに変えるための行動は、2030年までに年間10.1兆米ドルのビジネス価値を生み出し、3億9,500万人の雇用を創出する可能性があるとされています。
IPBES、UNEP、WWF、グローバル・キャノピー、フランス中央銀行やオランダの委託を受けた報告書では、炭素や気候を超えて、自然への依存関係や影響を理解することで、この問題の解決策の一端を提供する金融セクターの役割が強調されます。
TFNDの最終的な成果は、これらのリスクや影響を可視化し、自然や人々にとってマイナスとなる資金の流れを減らすことで、世界経済の回復力を高めることです。同時に、パリ協定、国連生物多様性条約(CBD)ポスト2020生物多様性目標(Post2020 Biodiversity Goals)、国連持続可能な開発目標(SDGs)に沿って、資金ギャップを埋めることが期待されています。
リスクを回避し、新たな機会を見つけるために、IWGのメンバーは、金融機関のリスク、依存関係、自然への影響をよりよく理解できるように、今後2年間で金融機関の報告ニーズ、指標、データを解決するための作業を行っています。
TNFD は、金融が、自然と生物多様性に与える負の影響を軽減するための意識と能力を高めることが期待されています。経済の様々な事業部門が自然の生態系サービスに与える依存関係や影響についての理解を深めるツールとなるよう包括的な検討が行われています。
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