オーストラリア政府が法案を発表したグーグルとフェイスブックに対するニュース記事使用料義務化ルールについて、オーストラリア政府と両社の間での協議が難航している。両社は、政府との協議が納得いく形で妥結できない場合には、オーストラリアで一部サービスを撤退する意向も示し、社会からの理解を得ようと動いている。
同事案の発端は、オーストラリアのジョシュ・フライデンバーグ財相が2020年7月、オーストラリア国内の報道機関の利益を確保するため、ITプラットフォーマーに対し、サービスプラットフォーム上でのニュース掲載に使用料を報道機関に支払うことを義務化する政策を発表したことにある。制定するルールは、報道機関は対象のプラットフォーマーと団体交渉を行い、使用料協議を行い、協議が不調に終わった場合には、オーストラリア通信メディア庁が裁定し、使用料を決定。プラットフォーマーが違反した場合には、違反毎にオーストラリア国内売上の10%を罰金として科す。但し、違反毎の罰金上限は1,000万豪ドル(約8億円)に設定される。
この発表時点では、グーグルとフェイスブックは対象として明言されながらも、他のサービスについても対象となる可能性を示唆。また法案では、ニュース表示にアルゴリズムの変更についても、報道機関側に通知することも義務付けると公言していた。
この発表の直後から、グーグルとフェイスブックが大きく反発。徹底抗戦の構えを見せた。そして、オーストラリア政府は、意見収集を進めた上で、2020年12月、ついに法案を国会に提出すると発表。法案の対象は、グーグルの検索結果とフェイスブックのニュースフィードに限定され、インスタグラムとグーグル・ニュースは対象外とされた。またアルゴリズム変更の通知義務締切は変更から28日以内と設定された。さらに、グーグルとフェイスブックは、ニュース関連のユーザーデータを報道機関と共有することも義務付ける内容となった。オーストラリア政府は、グーグルとフェイスブックが、同国のメディアに強大な影響力を持っているため規制すべき説明していた。
これに対し、グーグルは1月22日、同法案を成立させた場合、オーストラリアでの検索サービスを提供を停止すると宣言。また、グーグルは、別途、オーストラリアでの展開を予定しているニュースサイト・サービスの開始を2月に計画し、対抗策として打ち出すことも、1月27日に現地メディアによって報じられた。
同様にフェイスブックも、オーストラリア・ユーザーがニュースサイトを投稿できなくなるようにすると表明し、交渉のカードを切った。フェイスブックによると、オーストラリアの全投稿のうちニュースが占める割合は5%ほどだが、オーストラリアのユーザー・エクスペリエンスには大きな影響が出るだろうと危惧を表明した。
今回のルールの鍵を握るオーストラリア規制当局のオーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)が1月28日、フェイスブックとグーグルの市場支配力に関する中間報告書を公表。グーグルは、オーストラリアのディスプレイ広告市場で34億米ドルの売上を叩き出しており、支配力から自社を不当に優先する潜在力があると指摘した。ACCCは、最終報告書を8月までに作成することが義務付けられており、今後数ヶ月の展開にも目が離せなくなる。
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