世界経済フォーラム(WEF)は1月19日、1月25日から開催される特別会合「ダボス・アジェンダ2021」に向け、「グローバルリスク報告書2021」を発表した。世界経済フォーラムは毎年1月に開催されるWEFの年次会合(通称ダボス会議)のタイミングに合わせてこの「グローバルリスク報告書」を発表しており今回が16回目。しかし2021年は、新型コロナウイルス・パンデミックの安全対策のため、スイス・ダボスでの開催を取り止め、5月にシンガポールで年次総会を開催することが決まっている。
報告書の作成では、まず世界経済フォーラムの専門家メンバー約1,000名に対し、アンケート調査「Global Risks Perception Survey(GPRS)」を実施し、その結果をもとに集計を行っている。今年の回答数は843。調査票には、35のリスクが挙げられており、それぞれのリスクについて今後10年での発生可能性と負のインパクトの2つの観点について回答が求められる。
集計と分析は、マーシュ・アンド・マクレナン・カンパニーとチューリッヒ保険グループが毎年担当しているが、今年は韓国SKグループも加わり、3社体制となった。
今回の報告書で最も発生可能性が高いとされたリスク
- 異常気象
- 気候アクションの失敗
- 人為的環境破壊
- 感染症
- 生物多様性の損失
今回の報告書で最も負のインパクトが大きいとされたリスク
- 感染症
- 気候アクションの失敗
- 大量破壊兵器
- 生物多様性の損失
- 自然資源危機
発生可能性に関するランキングでは、「異常気象」が4年連続で1位。その他でも昨年同様、気候変動関連のリスクが上位を占めた。その中で、昨年前半から猛威を振るっている新型コロナウイルス・パンデミックを反映し、4位に「感染症」が入った。
インパクトに関するランキングでも、ほぼ削減と同様だったが、やはり「感染症」のみは昨年から大幅に上昇し1位となった。
5位以下では、発生可能性とインパクトの双方で、所得危機、債務危機、長期的な経済停滞、社会的結束の侵食等、パンデミックや社会・政治分断に関するリスク認識が高まっていた。また特に、「Shapers」と呼ばれる世界経済フォーラムが招聘する若手リーダーの回答では、全体的に環境と社会の双方のリスクが上昇しており、若い世代ほど不安を感じていることもわかった。
(出所)WEF
2010年までは、グローバルリスクの中でも経済や金融リスクが上位をほぼ独占していたが、2011年以降はそれ以上に環境リスクが上位を占めるようになってきた。今回も金融危機等の経済リスクは順位が相対的に低かった。一方で、サイバーアタックは、環境課題に次いで高いリスク認識がなされた。
今年のレポートでは、ITに関しても多くの解説にページを割いており、パンデミックで顕在化したデジタル格差、監視社会、通信断絶、インターネットと政府の関係性等についても、新たなリスクが浮上してきていることを伺わせた。
【レポート】The Global Risks Report 2021
【参照ページ】These are the top risks for business in the post-COVID world
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