エネルギー世界大手米エクソンモービルは1月5日、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)ガイドラインに基づくレポートを発行し、同社として初めて販売製品使用でのスコープ3排出量を公表した。同社に対しては、株主である機関投資家から開示の要求が高まっていた。
同社が発表したスコープ3排出量は、探鉱、開発、生産(採掘)を指す「上流工程」が、石油で1.9億t、原油で3.8億tで合計5.7億t。精製が6.3億t、販売製品の使用が7.3億t。
しかし同社は今回発表したスコープ3排出量について、数多くの説明と注釈を加えた。まず、IPIECA(国際石油産業環境保護協会)の算出法によると、同社の販売製品使用(スコープ3カテゴリー11)の排出量は7.3億tではなく、上流生産分に当たる5.7億tになるとし、同社としての報告としては5.7億tが正しいものだと主張した。また、上流、精製、使用の3部では、重複が多いため、合算することは不適切と言及した。さらに、顧客での石炭火力発電を減らすために、同社のガス販売量が伸びると、同社のスコープ3排出量が増えることから、同社の経営にとってスコープ3排出量は「無意味」と断じた。
ブルームバーグによると、エネルギー大手のスコープ3排出量は、エクソンモービルが7.3億tで最多。その後に、ロイヤル・ダッチ・シェル6.9億t、トタル4.2億t、シェブロン4.1億t、BP3.6億t、Eni2・6億t、エクイノール2.5億t、オキシデンタル・ペトロリアム1億tと続く。
エクソンモービルは、同レポートの中で、2025年の削減目標も示しているが、「無意味」としたスコープ3の排出量は一切考慮しなかった。設定した目標は、メタンガス漏出とガスフレアを総量で2016年比で40%から50%減、上流工程全体では最大30%減。そのための施策として、メタンガス漏出を原単位40%から50%減、ガスフレアを原単位で35%から45%減とした。取締役報酬の評価にも、環境フットプリントに関するKPIを加えたたが、あくまでスコープ1とスコープ2にとどめた。
同社がシナリオ分析の中で示した2℃の世界では、2010年から2040年までの電源別の年平均成長率(CAGR)において、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のデータに基づき、最大・中庸・最少の3つを提示している。そのうち石炭火力発電は最大でも0%で、最少は10%以上の減少。一方、最大・中庸・最少のいずれでも最もCAGRが高いとしたのが非バイオマスの再生可能エネルギーだった。それ以外の電源は、最少では全てマイナスとした。石油とガスに関しては中庸を0%成長とした。
同社の今後のR&D投資戦略では、まずは顧客である発電、輸送、化学の3セクターでの二酸化炭素排出量削減技術と説明。顧客での排出量を減らすことで、石油・ガス消費を極力続けていきたい意向を匂わせた。その他は、炭素回収・貯留(CCS)技術と、バイオ燃料、直接空気回収(DAC)技術とした。また天然ガス販売を強化することを掲げた。
【参照ページ】Energy & Carbon Summary
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら