持続可能な発展を目指すグローバル企業団体WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)は12月8日、欧州での二国間に跨るクロスボーダー電力購入契約(PPA)の活用推進を掲げたレポートを発表した。また欧州環境庁(EEA)も12月18日、同様にクロスボーダーPPAの推進政策を後押しするレポートを発行した。欧州では、「汎欧州vPPA」という類似の用語も生み出されており、再生可能エネルギー比率を高めるため、電源地に拘らないアクションが増えてきた。
【参考】【EU】ハイネケン、フィリップス等4社、欧州規模vPPA締結。フィンランドで風力電源開発(2020年12月18日)
クロスボーダーPPAは、再生可能エネルギー発電に適した場所で発電を行い、それを国境を超えて、他国の企業が電力購入契約を結ぶというもの。実際には、電気は物理的な存在ではないため、契約上でのトラッキングとなるが、それでも特に再生可能エネルギー発電が地理的に適していない国において、再生可能エネルギーの消費比率を高める重要なオプションとなる。
WBCSDでのレポートは、クロスボーダーPPA締結のためのステップとして、立地国の規制障壁の確認、より好条件の契約締結先の探索、電力需要を束ねた上で規模の大きな契約を締結する、という3つのステップを提示した。
クロスボーダーPPAは、実際に送電網がつながっており、直接発電者と需要家が売買契約を結ぶ「物理的PPA」と、発電者は送配電企業に市場価格で売却し、需要家も送配電企業から市場価格で電力を購入し、発電量と調達量だけをマッチさせる「仮想的PPA(バーチャルPPA)」の双方がありうる。すでに仮想的PPAについては、WBCSDは複数のレポートを発表しているため、今回のレポートは、物理的なクロスボーダーPPAを重点的に解説した。
クロスボーダーPPAに特有のリスクとしては、クロスボーダーで法規制が複雑になることからくるリスクと、送配電網のクロスボーダー取引が活発化することにより、各々の地域での市場価格に与える影響が大きくなるリスクを挙げた。特に将来の電源構成の変化や電源の逼迫・余剰度等による市場価格への影響が複雑となるため、これまでとは別の観点でのリスクマネジメントが必要となる。
またEEAのレポートでは、すでに協力関係を締結しているノルウェーとスウェーデンの事例、そしてドイツとデンマークの事例、また協力関係が検討されたが最終的に破談となった英国とアイルランドの事例について紹介した。その上で、政策決定者向けに、あるべき政策枠組みを提示した。
【参照ページ】Cross-border PPAs: New opportunities for business to decarbonize their electricity supply across Europe
【参照ページ】Joint cross-border renewable energy projects are feasible and beneficial
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