IT世界大手米フェイスブックは12月1日、人権に関する監督理事会で審議する初の案件を発表した。同社は、SNS投稿での偽情報・ヘイトスピーチや表現の自由等の難しい人権問題への対応で2019年に同理事会を創設し、審議とパブリックコメント募集を通じて慎重に判断を下す体制を敷いている。
【参考】【アメリカ】フェイスブック、人権分野の監督理事会を独立法人として設置。SNSコンテンツの問題を判定(2019年12月18日)
【参考】【国際】フェイスブック、人権の監督理事会委員20人発表。アジア・アフリカからも。決定は拘束力持つ(2020年5月8日)
今回議案として発表されたのは全部で6つ。そのうち5件はユーザーから持ち込まれ、残りの1件はフェイスブックが付託した。ユーザーが持ち込んだもののうち3件は、マレーシアのムハンマド・マハティール元首相の投稿と、ミャンマー語で投稿された中国に対する闘争を呼びかける投稿、アゼルバイジャン人がアルメニア人の破壊行為を非難する投稿がヘイトスピーチ・ポリシーの違反として持ち込まれた。いずれもフェイスブックは投稿を削除しており、削除の判断の妥当性について監督理事会で審議する。
他の2件は、ブラジルで乳癌に対する啓蒙で、乳首を顕にした画像投稿を、フェイスブックがヌード・性的行為ポリシー違反として削除した件と、米トランプ大統領をナチス・ドイツのヨーゼフ・ゲッベルス氏に擬えて批判した投稿を、フェイスブックが危険人物・組織ポリシー違反として削除した件。
フェイスブック自身が付託した案件は、フランスの医薬品当局が、ヒドロキシクロロキンとアジスロマイシンを新型コロナウイルス感染症の治療薬として緊急使用許可を与えず、レムデシビルには与えたことをフランスの戦略欠如と批判した拡散された投稿を、フェイスブックが暴力・扇動ポリシー違反として削除したことの妥当性確認で、監督理事会に持ち込んだ。
監督理事会では、各案件に対し、5人の委員で構成するパネルを設置。委員の一人以上は当該事案発生国からの委員を充てる。判断は90日以内に下すことを目標とする。各々の審議では、広くパブリックコメントを募集し、意見も募る。下された判断は、フェイスブックは遵守する義務を負う。
同社は同日、監督理事会の独立性をチェックする役割を負う評議員を5人選任した。5人は、米国や南アフリカの人権関連の専門家から選ばれた。監督理事会の委員とは異なり、評議員は審議には加わらず、委員会を監督する役割のみを持つ。
また監督理事会は12月21日、フェイスブックでの人権に関する報告書も発行している。同報告書は、米BSRに対し委託した人権に関するアクション勧告に基づき、現状をチェックしたもの。BSRが勧告した34のアクションに対し、完全遵守は17項目、部分遵守は9項目。同監督理事会は2021年前半にも再び進捗報告書を発行する予定。
【参照ページ】Announcing the Oversight Board’s first cases and appointment of trustees
【参照ページ】Announcing the outcome of a human rights report on the Oversight Board
【参照ページ】Human Rights Review
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