化学世界大手英リンデは12月、次世代燃料電池(FC)重量車両を共同開発で独ダイムラー傘下のダイムラー・トラックと、欧州での水素生産プロジェクト及び関連インフラ開発でイタリアガス大手スナムとの提携を発表。急速に盛り上げる水素市場でのパートナーシップを拡大した。
産業ガスとして早くから水素事業を開始してきたリンデは、仏エア・リキードと並び、液体水素の分野で世界最大の生産・供給能力を持つ。水素貯留では近年、洞窟、岩塩ドーム、油田・ガス田跡を活用して大量の水素を貯留する「地下水素貯留」と呼ばれる仕組みも検討されているが、世界第の高純度水素貯留洞窟を保有しているのもリンデ。運用している水素パイプラインは約1,000kmに及ぶ。また同社は、水素補給ステーションも世界200ヶ所、水電解水素生産プラントも80機を保有している。
リンデとダイムラー・トラックの提携は12月10日に発表。両社は、サブクール液体水素(sLH2)を活用した燃料供給技術を用いた次世代燃料電池(FC)大型車両を共同開発する。実現すると、高速な燃料補給や高い積載容量、省エネが可能となる。
開発した技術は、メルセデスベンツが2020年9月にコンセプトカーとして発表した「GenH2」トラックの最新バージョンに実装される。走行距離は1,000km以上。プロトタイプ車両への最初の水素燃料供給は、ドイツで試験運用している水素補給ステーションで2023年に行う予定。
リンデは、水素生産ではグリーン水素に注力。電解技術では、同社はグリーン水素生産技術で英国をリードするITMパワーにマイノリティ出資した上で2019年に合弁会社ITM Linde Electrolysisをドイツに設立している。ITMパワーは。ロイヤル・ダッチ・シェルが2017年に英国で最初の水素補給ステーションを建設したときの設備提供企業でもあり、英国で年間1GWの水電解工場を建設中。
リンデは、2020年7月には、中国でのグリーン水素市場の普及・発展で、中国電力国際発展の子会社Beijing Green Hydrogen Technology Developmentと覚書を提携。Beijing Green Hydrogen Technology Developmentは、8月には独シーメンス・エナジーと初のグリーン水素プラント共同建設でも合意しており、中国のグリーン水素市場の雄。またリンデは米国でも11月にカリフォルニア州での燃料電池(FC)自動車向けの水素補給ステーション向けのグリーン水素生産を開始すると発表している。
その上でリンデは12月7日、欧州での水素生産、流通、圧縮、貯留分野で、イタリアのガス大手スナムと覚書も締結し、共同出資の機会を探索していくと発表した。スナムもグリーン水素の供給に注力しており、リンデと同じくITMパワーにも出資。3社間の協働がさらに進む形となる。
リンデとスナムはグリーン水素推進の国際業界イニシアチブ「グリーン水素カタパルト」にも創設メンバーとして加盟。2026年までにグリーン水素の生産量を現在の50倍の25GWまで伸ばし、さらに水素生産コストを1kg当たり2米ドル未満にまで現状から半減させることを目指す。
【参考】【国際】7社、グリーン水素推進で国際イニシアチブ発足。国連も支援。水素コスト2ドル/kg未満へ
【参照ページ】Linde and Daimler Truck to Collaborate on Hydrogen Refueling Technology
【参照ページ】Linde and Snam Sign Agreement to Jointly Develop Clean Hydrogen Projects
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