航空世界大手米アメリカン航空は12月10日、2020年度ESGレポートの中で、2050年に二酸化炭素ネット排出量ゼロ(カーボンニュートラル)を実現するための道筋を示した。
機体の燃費改善では、2013年以降、230億米ドル(約2.4兆円)投資し、ボーイング787やエアバス321ネオ等の機体を550機導入。2020年には新型コロナウイルス・パンデミックの影響で、燃費の悪い旧式機体の退役を増やした。投入を予定しているボーイング737MAXは、ボーイング757と比べ、燃費が35%改善する見通し。また、短期的には燃費改善効果を全体としても10%から15%高めつつ、長期的には、抜本的なエンジンや航空技術の変革も目指す。
運航改善では、2020年中旬までにリアルタイムの気象条件に応じて運航省エネを実現するソフトウェアを主要機体の8割に搭載。連邦航空局(FAA)が開発を進める人工衛星データ活用型の、次世代型の航空交通管制(ATC)プログラム「NextGen」でも排出量の12%削減が期待されている。
加えて、空港停泊時に、空港からの送電ケーブルを引き電気系統を作動させることで、ジェット燃料による補助動力装置(AUX)稼働を削減。1機体が1分間AUX作動時間を削減と、年間で1,000ガロン(約4,500l)のジェット燃料消費を減らすことができるという。さらに陸上での車輪移動時にエンジン一つだけで稼働させることで、移動時の二酸化炭素排出量を20%から40%も削減できる。
運航改善では、機体だけでなく、地上作業車からの排出量を削減するため、ディーゼル車やガソリン車を電気自動車化する。2019年にはすでに50台以上を導入した。
(出所)AA
燃料イノベーションでは、持続可能なジェット燃料(SAF)が大きな鍵となる。同社は廃油からジェット燃料に転換する大手ネステからSAFを3年間で900万ガロン調達し、2020年7月からサンフランシスコ国際空港での給油を開始している。しかし、安価なSAFを大量に生産することに課題があり、調達料は同社の年間エネルギー消費量の1%に留まっている。打開策としては、世界経済フォーラム(WEF)の「Clean Skies for Tomorrow Coalition」と、BSRの「Sustainable Air Freight Alliance」、米国の「Commercial Aviation Alternative Fuels Initiative(CAAFI)」に言及し、大量生産に向けたマルチステークホルダー型のイニシアチブを推進していく考えを示した。
それでも残る二酸化炭素排出量については、国際線のカーボンオフセット及び削減スキーム(CORSIA)や、自発的なカーボンオフセットで、カーボンニュートラルを実現する。
【参考】【国際】ICAO、CO2オフセット制度CORSIAで報告管理簿リリース。第1フェーズ参加が87ヶ国に(2020年7月5日)
その他施設面でも、グリーンビルディング化を進めるとともに、再生可能エネルギーへの切り替えも行う。
航空業界では、英航空業界団体UK Sustainable Aviation coalitionが2月に、2050年までに航空業界での二酸化炭素ネット排出量ゼロ(カーボンニュートラル)計画を発表。先鞭をつけた。
【参考】【イギリス】航空業界、2050年までのカーボンニュートラルでロードマップ提示。業界主導で政府動かす(2020年2月8日)
【レポート】Environmental, Social and Governance Report
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