公正取引委員会は11月27日、スタートアップの事業活動における公正かつ自由な競争を促進する観点から、幅広い業種を含めたスタートアップの取引慣行の実態に関する調査報告書を公表した。業務提携先の大企業や出資者による問題行為が多数検知され、同委員会は「厳正に対処していく」と対策を強化する方針を示した。
同委員会は2019年6月、「製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査報告書」を公表。製造業では、中小企業のノウハウ・知的財産権に係る取引で、独占禁止法上問題に該当し得る事例が確認されるとともに、スタートアップに対する取引慣行にも問題があることが指摘されていた。そのため今回、製造業以外も含めた幅広い業種で実態調査が行われた。
調査では、公正取引委員会が選定した上で、スタートアップ5,593社にウェブ調査を実施。1,447社から回答を得た。またスタートアップ126社、出資者5社党にもヒアリング調査が行われた。
問題行為については、業務提携等の連携事業者からは、片務的なNDA(秘密保持契約)の締結、NDA違反、特許出願の制限、販売先の制限、ライセンスの無償提供、PoC等での無償作業、知的財産権の一方的帰属等が見られた。出資者からは、営業秘密の開示、NDA違反、無償作業、取引先の制限、研究開発活動等の制限等が見られた。
調査では、業務提携先や出資者から納得できない行為を受けたとの回答は17%。そのうち、売上5,000万未満で、社内に法務担当者がいないスタートアップでは29%にまで上がり、不当な圧力を受けている実態が見えてきた。また納得できない行為を受けたスタートアップの8割は、要求を受け入れる決断をしていた。
公正取引委員会は、スタートアップと連携事業者との各契約における問題事例とその具体的改善の方向や、独占禁止法上の考え方を整理したガイドラインの案を年内に作成し、パブリックコメントにかける考え。
【参照ページ】(令和2年11月27日)スタートアップの取引慣行に関する実態調査について(最終報告)
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