英ボリス・ジョンソン首相は11月18日、2030年までにガソリン・ディーゼル車の新車販売を禁止する政策を発表した。今後詳細を詰め、立法手続きをとる。英政府は2017年、ガソリン・ディーゼル車の新車販売を2040年までに禁止する方針を固め、2020年2月には同首相が禁止時期を2035年に早める考えを打ち出し、パブリックコメントを募集。その結果、さらに早く2030年に禁止する声が産業界からも出たため、今回10年もタイミングも前倒しすることとなった。
【参考】【イギリス】環境相、2040年までにガソリン・ディーゼル車販売を全面禁止。ハイブリッド車も対象(2017年8月6日)
【参考】【イギリス】首相、ハイブリッド車も2035年までに新車販売禁止。石炭火力も2024年10月に全廃(2020年2月7日)
今回発表の政策は、2030年までにガソリン・ディーゼル車の新車販売を禁止し、2035年までにハイブリッド車の新車販売を禁止し、新車販売ではゼロ・エミッション車のみを許可するというもの。さらに、イングランド地域の公道に電気自動車(EV)充電ステーションの設置に13億ポンド(約1,800億円)の助成金を支給。またEVや燃料電池自動車(FCV)の新車購入時補助金として、5.8億ポンド(約800億円)の予算を組む。
英運輸省と英ビジネス・エネルギー・産業戦略省は今回、EVやFCV等のゼロ・エミッション車には、緑色のナンバープレートを付与する施策を2020年12月から進めることも発表。市民への認知拡大だけでなく、色を目印に自治体が優遇施策等を打ち出せしやすくする。産業政策としても、EVやFCVの関連産業向けに、今後4年間で5億ポンドの予算を組む方針。
一方、バスやトラックについては、今回の発表の対象外とし、別途政策についてのパブリックコメントの募集を行い、政策をまとめる。
今回の政策については、ジョンソン首相が2020年2月に2035年への前倒しを発表して以降、6月にはThe Climate GroupとBTが2030年までの新車100%EV化で新イニシアチブ発足。さらに10月には、大手27社が英政府に2030年のディーゼル・ガソリン車新車販売禁止を要請。経済界から、2030年への前倒しを積極的に進める動きが出ていた。
【参考】【イギリス】The Climate GroupとBT、2030年までの新車100%EV化で新イニシアチブ発足(2020年6月5日)
【参考】【イギリス】大手27社、英政府に2030年のディーゼル・ガソリン車新車販売禁止を要請。EV推進(2020年10月3日)
加えて、ジョンソン首相は同日、新型コロナウイルス・パンデミックからの経済復興と気候変動対応を融合させる「グリーンリカバリー」政策の重点施策として「首相10ポイント・アクションプラン」も発表した。同アクションプランの中で掲げられた10施策は、
- 洋上風力発電の促進
- 低炭素水素の促進
- 先進原子力発電の推進
- ゼロ・エミッション車への転換の加速
- 自転車や徒歩も含めたグリーン公共交通
- 二酸化炭素排出量ゼロの船舶や航空機
- グリーンビルディング
- 炭素回収・利用・貯留(CCUS)への投資
- 自然環境保護
- グリーンファイナンスとグリーンイノベーション
英政府は10施策に対し、合計120億ポンド(約1.65兆円)の資金を動員する考えで、特に民間投資を現状から3倍に増やし、25万人分の雇用創出を狙う。自然環境保護では、特にイングランド地域では約40万haを国立公園や特別自然美観地域(AONB)と定め、2030年までに陸上の環境保護区を全領土の30%にまで引き上げる。グリーン・リカバリー・チャレンジ基金にも、新たに4,000万ポンドの予算を投入する。洪水対策として52億ポンドも計上する。
グリーンビルディング分野では、ジョンソン首相は同日、住居の省エネ修繕に対する補助金制度を2022年3月まで延長し、新たに2億ポンドの予算を組むことも明らかにした。同補助金制度では、省エネ修繕費を最大5,000米ドルまで費用の3分の2を、低所得世帯に対しては最大10,000ポンドまで費用を全額補助する制度。英政府は、同制度の延長で、10万人の雇用創出と、60万世帯の電気・ガス料金削減を目指す。さらに、ビジネス・エネルギー・産業戦略省は同日、金融機関に対する省エネ型不動産ローン等についての新規政策の方向性に関するパブリックコメント募集を開始した。
ビジネス・エネルギー・産業戦略省は他にも同日、照明器具に関する新たなエコラベル制度についても、パブリックコメント募集を開始している。
【参照ページ】Government takes historic step towards net-zero with end of sale of new petrol and diesel cars by 2030
【参照ページ】The ten point plan for a green industrial revolution
【参照ページ】£80 million fund for green jobs and new national parks to kick start green recovery
【参照ページ】Green Homes Grant extended for extra year
【参照ページ】Improving home energy performance through lenders
【参照ページ】Draft Ecodesign and Energy Labelling Regulations (Lighting Sources) 2021
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら