米連邦準備制度理事会(FRB)は11月9日、半年に1回の金融安定報告書を公表。同報告書に列挙するリスクとして初めて気候変動に言及した。気候変動は、不動産や株式等で資産価値の暴落を引き起こし得ると警鐘。メディア各社の注目を集めた。
同報告書は、「資産価格評価」「企業や家計の借入」「金融セクターのレバレッジ」「資金調達リスク」に関する概況と「直近予測される金融システムへのリスク」で構成。今回、気候変動リスクが直近予測される金融システムへのリスクとして指摘された。
FRBに対しては、米ESG投資分野アドボカシーNGOのCeresが7月、金融規制の中に気候変動の観点を統合することを求める共同書簡を送付。同様に書簡を受領したカリフォルニア州教職員退職年金基金(CalSTRS)、カリフォルニア州財務長官室、ニューヨーク州財務長官室、ニューヨーク市財務長官室、アラベスク等が賛同する中、対応が注目されていた。
今回FRBは、直近予測される金融システムへのリスクについて、2020年5月版同様、新型コロナウイルス・パンデミックを挙げ、金融システムの脆弱性が高まっていると指摘した。加えて、気候変動について、金融安定性に関する分析対象として組み入れ始めたばかりのリスクや、経済的な不透明性を引き起こす要因となると名言。過去のパターンとは異なる形で、セクター別・地域別に様々なリスクに直面し得ると分析した。
(出所)FRB
暴風雨、洪水、干ばつ、山火事等の「突発的な危機(Acute hazards)」については、将来の経済状況や実物資産や金融資産の価値を突如として変える可能性があると説明。徐々に変化する海面上昇や機関投資家のリスク認識等の「慢性的な危機(Chronic hazards)」についても、突如として転換点を迎え、対応姿勢の大きな変化が起こる可能性があるとした。
また、こうした気候変動に伴う価格変動や直接的な損失は、金融危機の頻度と深刻さを増幅させる可能性があると強調。気候リスクエクスポージャーの不透明性や、市場参加者の不均衡な考えにより、資産価格の誤った評価や価格下落が懸念されるとした。また、その発生タイミングと影響を事前に予測することも困難だとした。
一方、気候変動に対する脆弱性に伴う金融危機を緩和する可能性についても示唆。金融システム内の対応としては、気候変動関連指標の測定や、情報開示が重要だと強調。気候や経済、金融の相関関係を解明する継続的な研究により、リスクが緩和される可能性があるとした。
金融システム外の対応では、技術革新や政策の変更による物理リスクの緩和・適応を推奨。FRBでも調査を継続し、米国内外のステークホルダーとの協働で、気候変動が金融セクターに与える影響を明らかにするとした。
【参照ページ】Financial Stability Report
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