米アリゾナ州の公共インフラ規制当局「Arizona Corporation Commissioners」は10月29日、州内電力会社に対し、2050年までに二酸化炭素ゼロ電源に転換させる計画を、賛成3、反対2で承認した。アリゾナ州は、共和党への支持が強い州として有名だが、今回3人いる共和党委員のうち1人が、賛成に回り、多数で可決された。
今回の決定は、まず2035年までに再生可能エネルギーもしくは原子力発電の割合を50%以上に高め、2050年までに100%にする計画。同時に屋根裏断熱材や省エネ電球への切替に補助金を付け、エネルギー消費量の削減も行う。
さらに同決定では、中間目標として、2016年から2018年の二酸化炭素排出量平均を基準とし、2032年までに半減、2040年までに75%削減することを電力会社に義務化することも盛り込んだ。これに伴い、州内電力会社は、化石燃料を燃料とする石炭火力発電とガス火力発電を段階的に廃止する計画を直ちに検討しかなければならなくなった。
加えて同決定では、電力会社に対し、2036年までに蓄電バッテリーを2020年のピーク電力の5%以上導入することも義務化した上で、蓄電施設の所有権を電力会社だけでなく、需要家にも持たせることも命じた。これにより電力会社が蓄電設備の行使権限を独占できないようにする。試算では、同州電力大手のアリゾナ・パブリック・サービシーズ(APS)や、ツーソン電力では、2035年までに蓄電バッテリーを200MW以上整備しなければならない。
Arizona Corporation Commissionersは定員が5人。米国の多くの州では、同様の当局を州知事が任命することが多いが、アリゾナ州は民選で選出している。現在の委員は、共和党員が3人、民主党員が2人で、委員長は共和党員。しかし今回の決定では、共和党員の委員長が賛成に回り、他の民主党2人と合わせて賛成票が過半数に達した。
同委員会は、委員全員が共和党員だった2006年に、再生可能エネルギー基準・価格ルールを決定し、電力会社に対し、2025年までに再生可能エネルギー比率を15%にまで高めることを義務化していた。今回14年ぶりに、同ルールが改訂され、大幅に脱炭素化を進めることが決まった。同州の大手電力会社は、今回の決定の新ルールを遵守するため、毎月3.5米ドルを顧客から徴収する。
また、環境NGOのシエラクラブやウェスタン・グリッド・グループが求めていた電力会社の透明性向上については、今回の決定の中で、Arizona Corporation Commissionersが、各電力会社の電源計画や発電所建設計画、他社からの電力購入計画等について認可する権限を付与することも決まった。これにより、電力会社の経営の透明性が高まることが期待されている。
今回の決定までの議論では、同州内の半導体大手オン・セミコンダクター、アルミニウム大手ボール・グループ、同州内約750社が加盟するArizona Technology Councilは、再生可能エネルギー比率改善の義務化に賛成していた。
同決定については、細部の議論がまだ残っており、完全に青信号が出るには、同委員会でのさらなる決定と、行政裁判所判事からの審問が必要。全てが整うまでには、数ヶ月がかかるとみられている。
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