金融安定理事会(FSB)は10月29日、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が第3回の進捗報告書「2020進捗レポート」を公表したと発表した。同時に、金融セクターに対する情報開示をさらに促すため、開示指標とデータ収集に関する課題についてのパブリックコメントの募集も開始した。
【参考】【国際】TCFDの2019年進捗書、「開示の質に課題あり」と苦言。今後シナリオ分析指南書を策定(2019年6月7日)
進捗レポートによると、TCFDへの賛同企業・団体は、現在1,500以上で、2019年比では85%以上増加した。但し、昨年のレポートと同様、レポーティングの質の改善に大きな課題があると再び苦言を呈した。特に、気候変動が事業や戦略に与える財務インパクトの開示が非常に乏しいとした。
世界の時価総額上位上場企業100社のうちTCFD賛同もしくはTCFD提言に沿った報告を実施している企業は約60%。時価総額100億米ドル以上の大企業でTCFD提言に沿った報告を2019年に実施している企業は、各項目の平均で42%を越えたが、時価総額28億米ドル未満の上場企業では項目平均が15%と低かった。
TCFDの各項目での開示度では、最も開示率が高いのが、「戦略a.リスクと機会」で41%。続いて「戦略b.組織へのインパクト」が35%、「指標と目標a.気候関連指標」が35%、「指標と目標c.目標」が33%の順。一方、シナリオ分析を求める「戦略c.戦略レジリエンス」は7%と最も低かった。
地域別では、欧州企業が最も開示度が高く、次にアジア・太平洋、そして北米の順。但し北米企業は、「戦略a.リスクと機会」の開示率は50%で全地域で最も高かった。
業種別では、銀行、保険、エネルギー、素材・建設、輸送、農林・食品、IT・メディア、消費財の8業種のうち、最も開示率が高かったのは、エネルギー。次に素材・建設で、その後は銀行、保険、農林・食品が並ぶ。また、金融機関では、国連責任投資原則(PRI)の署名機関は年次報告でTCFD関連の設問回答が義務化されたことにより、開示機関が急増した。
開示の質に関しては、今回TCFDは、金融機関や信用格付会社から有用性のフィードバックを5段階で得た。結果、TCFD提言の11項目全てで、1から5までの5段階評価で、平均が1.5から2と非常に低かった。だが、「ガバナンスa.取締役会の監督」「戦略b.組織へのインパクト」では、回答者のスコアのばらつきが大きく、データの受け手側の問題が大きいこともわかった。
この結果を受け、TCFDは今回、開示の提言として、まずは開示全体の基礎情報を提供するガバナンスとリスクマネジメントを充実させることを推奨した。次に目標と指標を充実させ、日本企業が飛びつきがちなシナリオ分析については、一番最後の着手すべきとの考えを披露した。
一方、金融セクターの開示指標に関するパブリックコメントの募集は、2021年1月27日まで。その結果を受けTCFDは、金融機関向けガイダンスの改定や開示指標の設定が必要かを判断する。
【参照ページ】Third TCFD Status Report Shows Progress & Highlights Need for Greater ClimateRelated Disclosures and Transparency
【レポート】Task Force on Climate-related Financial Disclosures 2020 Status Report
【参照ページ】Task Force on Climate-related Financial Disclosures Forward-Looking Financial Sector Metrics Consultation
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