表現の自由・プライバシー保護推進の国際イニシアチブ「グローバル・ネットワーク・イニシアティブ(GNI)」は10月13日、有害デジタル関連コンテンツへの各国の規制に関する傾向と分析、提言をまとめたレポート「Content Regulation and Human Rights: Analysis and Recommendations」を公表。20カ国以上の政策やイニシアチブを分析し、表現の自由やプライバシー保護と有害コンテンツ対策を実施するための実践的な手引を示した。
同レポートは、米国、英国、EU、ドイツ、フランス、アイルランド、オーストラリア、ブラジル、トルコ、シンガポール、インド、パキスタン、ケニア、タンザニアの法律を分析対象に選んだ。日本は含まれていない。
同レポートでは、世界中で偽情報(フェイクニュース)やオンライン過激主義等の有害コンテンツが蔓延しており、インターネット上の法整備の必要性が広く認知されつつあることを示した。一方、コンテンツ規制等の法整備を行う場合は、表現の自由やプライバシーの問題にも、注意深く留意する必要があると指摘。現在の政府イニシアチブは、表現の自由やプライバシーの問題に対する配慮に欠け、法的安定性を損ねる可能性があると警鐘を鳴らした。
また、多くの政策に共通する特に大きな問題点3つを提示。1つ目は、規制当局がコンテンツ・プロバイダーに対し、違法および不適当なコンテンツの取締りを自動フィルタリングシステムで行うよう要求または推奨している点を挙げた。自動フィルタリングは、コンテンツの必要以上の排除や自己検閲の可能性を高める危険があるという。
2つ目は、規制当局がコンテンツ関連情報の追跡を要求すること。個人間のメッセージサービスにまで踏みこんだ規制が検討されているケースもあり、深刻なプライバシーの侵害が懸念されるとした。
3つ目は、法律の言葉の定義が曖昧であり、拡大解釈が可能であること。どのような表現が違法であるかという定義の他、どのような規模の企業に適用されるか、バリューチェーンにおけるどのレイヤーの企業に適用されるのか等が不明確な場合があるとした。
GNIは、有害コンテンツ規制の必要性は、IT企業に限らず一般市民の有識者にも浸透しているとの見解をまとめている。問題への対処経験も少しずつ蓄積されつつあるとし、立法手続では、多様な人々の意見を反映できるよう、オープンかつ透明性を担保することも提唱した。
また、規制の検討時には、情報流通の複雑性にも向き合うことが重要と強調。コンテンツ・プロバイダーに法的責任を負わせようとする姿勢は、コンテンツに対する監視の強化や必要以上の削除にも繋がると注意を喚起した。
【参照ページ】Addressing Digital Harms AND Protecting Human Rights — GNI Shares Recommendations for Policymakers
【参照ページ】CONTENT REGULATION AND HUMAN RIGHTS
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