米司法省及び11州司法長官は10月20日、グーグルを相手取り、ワシントンD.C.の連邦地方裁判所に提訴した。提訴理由は検索市場及び検索広告市場での反競争法的で排他的な独占行為。連邦政府とともに提訴を実施した11州は、アーカンソー州、フロリダ州、ジョージア州、インディアナ州、ケンタッキー州、ルイジアナ州、ミシシッピ州、ミズーリ州、モンタナ州、サウスカロライナ州、テキサス州。
司法省の声明では、グーグルは、インターネット上での数十億人のユーザーと広告主にとっての門番の地位を独占していると主張。米国では何年も検索市場で約90%のシェアを占め、その地位を通じて広告市場を独占していると批判。また、携帯電話やパソコンで、グーグルの検索エンジンをデフォルト設定するよう強要し、他社の検索エンジンをデフォルト設定することを阻み、それにより他のイノベーション企業がグーグルと競合することを妨げてきたと言及した。
司法省は今回、かつてのスタンダード・オイル、そして1974年のAT&T、1998年のマイクロソフトに対し、競争法の中心的な役割を果たすシャーマン法を行使した事例を引き合いに出し、再びシャーマン法を行使するときが来たと述べた。
グーグルは同日、ホームページ上で、司法省の提訴に対し反論。提訴は消費者のメリットにはならず、検索の質は下がり、携帯電話価格は上がり、消費者が求める検索サービスを活用しづらいくなると猛抗議した。携帯電話やパソコンでグーグルの検索エンジンを強要しているとの主張に対しては、最終決定権はアップル、AT&T、ベライゾン、サムスン電子、LG電子のような企業にあり、パソコンではマイクロソフトが圧倒的な支配権を持っており、アップルがサファリ・ブラウザでグーグルを採用しているのは、アップルがグーグルを最良と判断したからだと述べた。
EUも2010年以降、グーグルに対し、競争法違反で3件の罰金命令を命じ、合計約80億ユーロ(約1兆円)の罰金を科してきた。だが、今回、米国の司法省が狙っていると言われる「グーグルの解体分割」まで要求した例はない。
【参考】【EU】欧州委、グーグル・アドセンスで競合排除の支配的地位乱用と判断。競争法違反で1900億円罰金(2019年3月23日)
【参考】【EU】欧州委員会、グーグルに競争法違反で5700億円制裁金命令。同社は控訴の考え(2018年7月22日)
日本政府は、今回の提訴に関し、加藤勝信・官房長官より「日本政府としても関心を持って注視したい」とのコメントが出ている。また日本ではプラットフォーマー規制が目下検討されているが、グーグル等のGAFAMを分割するところまでは議論されていない。
米司法省がこのタイミングで提訴した背景には、トランプ政権の政策に対して反発を強めていたIT大手に対し、トランプ政権が11月の大統領選挙を前に「リーダーシップ」を誇示しようとしたためとの見方も強い。グーグル等に対する牽制の狙いもあると考えられる。また最終判決までには数年かかるとも見られている。11月の大統領選挙で、トランプ大統領と、バイデン民主党候補のいずれが勝利しても、今回の提訴は穏便に和解等で片付けられる可能性もある。
【参照ページ】Justice Department Sues Monopolist Google For Violating Antitrust Laws
【参照ページ】A deeply flawed lawsuit that would do nothing to help consumers
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