国際エネルギー機関(IEA)は10月13日、世界エネルギー展望をまとめた2020年版レポート「世界エネルギー見通し(World Energy Outlook)2020」を発行した。将来のシナリオを更新した。IEAが提示しするエネルギー・シナリオは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)のシナリオ分析の中で非常に多く使われている。
IEAは今回、新型コロナウイルス・パンデミックにより、2020年のエネルギー需要が前年比5%減少する見通しとなったことを受け、シナリオを大きく修正。新たに、宣言政策シナリオ(STEPS)、経済復興遅延シナリオ(DRS)、持続可能な開発シナリオ(SDS)、2050年ネットゼロ・シナリオの4つを提示した。
宣言政策シナリオ(STEPS)
各国政府が宣言している政策を反映させたシナリオ。2018年度版まで「新政策シナリオ(NPS)」と呼んでいたが、昨年からこの名称に変更した。同シナリオは、2023年前半にエネルギー需要が、新型コロナウイルス・パンデミック前の水準に回復することを想定している。
経済回復遅延シナリオ(DRS)
それに対し、DRSは、パンデミックの収束がさらに先に伸びたことで経済に落ち込みがさらに酷くなり、パンデミック前の水準にエネルギー需要が戻るのが2025年になると見立てたもの。同シナリオでは、経済の落ち込みにより、エネルギー転換のための投資も減少し、対策が遅れることも想定している。
持続可能な開発シナリオ(SDS)
再生可能エネルギーへの転換が大きく進み、2070年に二酸化炭素ネット排出量ゼロを実現できるというシナリオ。昨年まではSDSが最も気候変動対策が進むシナリオだった。
2050年ネットゼロ・エミッション・ケース(NZE2050)
SDSをさらに進展させ、2050年に二酸化炭素ネット排出量ゼロを実現できるというシナリオ。
(出所)IEA
IEAは全体の総括として、太陽光発電を中心に再生可能エネルギーが大幅に増加しているが、さらなる拡大への送電網への投資不足がボトルネックとなることや、ネットゼロを実現するためには、水素、低炭素燃料、バッテリー、炭素回収・利用・貯蔵(CCUS)のコスト削減が必要になるとの見解を伝えた。
【参照ページ】World Energy Outlook 2020 shows how the response to the Covid crisis can reshape the future of energy
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