英国財務報告評議会(FRC)は10月8日、将来の企業報告原則に関するディスカッション・ペーパーを発表。改善が求められている企業報告のあり方についての検討結果をまとめたもので、既存のアニュアルレポートに代わる新たな企業報告の改革案を提示した。
FRCは、現行のアニュアルレポートは「長すぎる」と指摘される一方、より多くの情報開示を求める声もあるという点を課題の出発点とし、企業が各々の状況や目的に応じて報告の位置づけを設計できる柔軟な「原則ベース」の企業報告ルールが必要と提唱。今回のその原則のフレームワークを提示した。策定過程では、同機関の「Future of Corporate Reporting Advisory Group」から意見を得た上で、研究者や幅広いステークホルダーからも情報を収集した。
今回提示した報告フレームワークは、中核となる「ビジネスレポート」と、それを支える「財務ステートメント」と「公益レポート」の3本立ての構造。FRCはこれを「報告ネットワーク」と呼んでいる。ビジネスレポートには、事業内容や事業の状況を示す財務情報と非財務情報を織り交ぜた報告書で、長期視点で要点を簡潔にまとめつつ、過去の財務報告は「財務ステートメント」で、その他のESGに関する詳細情報は「公益レポート」の中で開示するという立て付けになっている。
企業報告の基礎を形成する「マテリアリティ」については、欧州委員会が財務に影響を与える「財務マテリアリティ」と、財務への影響は小さいがステークホルダーに重大な影響を与える「社会・環境マテリアリティ」の2つを視野に入れた「ダブル・マテリアリティ」を提唱したり、最近では報告スタンダード策定機関から「ダイナミック・マテリアリティ」が提唱される中、FRCは、マテリアリティ概念の選択については、発行体が報告の目的に応じて自由に選択すれば良いという考えを見せた。
【参考】【国際】GRI、SASB、CDP、IIRC等、非財務情報開示での合同アクション発表。ダイナミック・マテリアリティ提唱(2020年9月16日)
ビジネスレポートに記載すべき情報としては、現行の英国法が定める「戦略レポート」に記載されているパーパス、ビジネスモデル、戦略、商品・市場、リスク、KPI、長期展望、ステークホルダーや環境へのインパクト、企業文化や価値とともに、財務情報の要約も記載することが望ましいとした。
また、公益レポートについては、2019年2月に英政府のブライドン・レビューの中で「公益レポートを作成すべき」と提言されたことを踏まえた名称で、非財務情報の中で「ビジネスレポート」に書ききらない詳細情報を記すべき独立レポートと位置づけている。
FRCは、今回提示したディスカッション・ペーパーに対するパブリックコメントを2021年2月5日まで受け付ける。
【参照ページ】A MATTER OF PRINCIPLES
【参照ページ】FRC Future of Corporate Reporting Project
【参照ページ】The quality and effectiveness of audit: independent review
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