欧州議会は10月8日、欧州委員会に対し、2030年までの二酸化炭素排出量削減目標を1990年比60%以上に引き上げる決議案を賛成392、反対161、棄権142の賛成多数で可決した。今後、加盟国閣僚級のEU理事会との交渉に入る。
2030年までの二酸化炭素排出量削減目標については、現在の法定目標である40%から、55%以上に引き上げる政策を欧州委員会が9月に発表したばかり。法定目標とするため欧州議会との折衝に入ったところ、欧州議会からはさらに高い目標を目指すべきと見解が示される事態となった。
【参考】【EU】グローバル大手企業164社、欧州委の2030年CO2排出量55%削減目標を支持。政府に強い圧力(2020年9月21日)
今回の決議では、全加盟国は2050年までに二酸化炭素ネット排出量ゼロ(カーボンニュートラル)を実現するため、2030年と2040年の大胆な長期目標を2023年5月31日までに公式に欧州議会とEU理事会に提案することを、欧州委員会に対し要求した。その中で2030年の目標については60%以上とすることを要求した。さらに、長期目標については、EU単独ではなく、世界全体での温暖化予測状況を考慮した上で、レビューすることも要求し、それに伴い、EU単独で努力をしていても、EU域外で温暖化が抑制できていなければ、EUもさらなる高い目標値を設定する必要があることとなる。
また同決議では、EUの行政機構から独立した立場でEUの政策を監督する「EU気候変動委員会(ECCC)」の設立も提案。気候変動委員会(CCC)は、英国で機能している制度。加えて同決議は、2025年待つまでに化石燃料に対する政府補助金を、間接的なものも含めて全廃することも要求した。
一方、ドイツ政府は9月23日、EU二酸化炭素排出量取引制度(EU-ETS)による炭素価格の上昇で大きな財務ダメージを受ける企業に対し、助成金を支給する制度を導入することで閣議決定した。ドイツ政府は、二酸化炭素排出量の多い企業が、EU域外に転出してしまう「カーボンリーケージ」問題を考慮し、カーボンリーケージを防ぐことで域内での二酸化炭素排出量を真剣に削減するようになり、雇用も保護できると意義を強調した。同制度では、二酸化炭素排出量削減の大きい企業にこそ手厚く助成できるようにすることで、削減努力を減退しないよう設計するという。
今回の制度はドイツ連邦環境省からの提案。EU-ETSの制度でも認められる範囲での助成という点も強調し、批判を交わす考え。ドイツ連邦環境省は、今後、省令を策定し、2021年から1月から新制度を導入する計画。
【参照ページ】EU climate law: MEPs want to increase 2030 emissions reduction target to 60%
【参照ページ】Brennstoffemissionshandel: Bundesregierung beschließt Eckpunkte zum Schutz der Industrie
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