国際医薬品アクセス向上NGOの医薬品アクセス財団(Access to Medicine Foundation)は10月2日、製薬業界に対し、透明性の確保が、医薬品アクセスの向上と信頼性構築において最も重要とする声明を発表した。研究機関、NGO、政府を含めた幅広いステークホルダーに向け、情報開示していくことを求めた。
同財団は、2030年までに国連持続可能な開発目標(SDGs)を達成するには、世界中の人々が製薬業界の事業から利益が得られるようにすることが重要と強調。透明性と医薬品アクセスについて、製薬業界の慣行、特に研究開発費、マーケティング費用、医薬品価格との関係等について改善が必要だと指摘した。
また、医薬品アクセスの達成状況は、投資家からも重大なリスクと機会を及ぼすとみられていることにも言及した。アクサ・インベストメント・マネージャーズ、Achmea、ICCR、リーガル&ゼネラル・インベストメント・マネジメント等が、医薬品業界のマテリアリティ評価の中でも医薬品アクセスを重視する姿勢を見せており、グローバルでのヘルスケア関連課題に対する関心が高まっているという。
医薬品アクセス財団は、世界中でのパンデミック発生や薬剤耐性(AMR)菌の増加が起こる中、低所得国の人々や企業は、医薬品アクセスを求めているとみている。そのため、製薬企業の役割として、新たな感染症等、重大疾病の研究開発、癌や糖尿病等の慢性疾患のより良い治療法の開発、医薬品やワクチンの手頃な価格での提供、医薬品アクセスの向上等を挙げた。また、これらの役割については、取締役会やCEOから現場レベルまで、すべての者が責任を持って遂行する必要があるとした。
透明性については、2020年版レポート「薬剤耐性(AMR)ベンチマーク」にも触れられているように、製薬企業9社は公開学術論文やデータプラットフォームでAMRに関する観察結果を公表。そのうち1社はローデータも公表していた。AMR情報の開示は、政府関係者や医療専門家に対し新たな治療法開発の需要を伝えるメリットがあると評価した。
2018年には、国別の特許状況を開示するオンラインプラットフォーム「Pat-INFORMED」を開設し、21社が参加。特許保有状況と期限に関する情報を簡易な表現で公開しており、医薬品調達の現場で活用されている。とりわけ、医薬品アクセスと国民皆保険(UHC)を実現するためには、「各社の特許取得志向・特許状況・非独占的任意ライセンスの範囲等に関する知的財産戦略情報」「貧困層のための手頃な価格での医薬品提供等の公平な価格戦略」「R&Dパイプライン及び医薬品アクセス・スチュワードシップ計画」「化合物ライブラリーのデータ、有効性と安全性の研究、研究と製造を可能にする技術、治験情報と結果」の4つを挙げた。
また、透明性を高めることは、ベストプラクティスの業界全体への普及や、独立機関による評価推進にもつながるとした。医薬品アクセス財団は、隔年で製薬企業の医薬品アクセス状況を分析・公表しており、2018年の分析時には、45のベストプラクティスを発見することができた。
【参考】【国際】医薬品アクセスインデックス2018、武田薬品工業が5位に躍進。首位GSK(2018年12月1日)
さらに、同NGOは、2019年5月に開催された世界保健機関(WHO)の世界保健総会(WHA)で、医薬品やその他の健康製品の価格と研究開発費に関する情報開示を支援する決議が承認されたことも紹介し、国際機関でも製薬企業に対する情報開示を求める声が上がっていることことにも言及した。特に国際レベルでの情報開示のためには、製薬企業の国別の事業所で実施されている特許取得やキャパシティビルディングの情報を、会社全体レベルで収集・整理する必要があるとした。そのような法人単位の情報整理は、ESG評価機関向けの情報開示にも資することになるとし、積極的なアクションを促した。
【参照ページ】Which information matters most? Transparency by Pharma that builds access to medicine plus trust and engagement
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