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【国際】世界経済フォーラム、自然ポジティブ・インフラ開発や海洋プラ対策で大きな成果

 世界経済フォーラム(WEF)は9月24日、自然環境にプラスの影響を与える「自然ポジティブ」型のインフラ開発は、都市経済に対し、雇用・事業警戒の両面でプラスに作用し、活性化につながるとする調査結果を発表した。豪コンサルティングAlphaBetaが調査に協力した。

 WEFは7月、生態系や生物多様性を考慮し、自然環境にプラスの影響を与える経済を実現するための提言レポート「Future of Nature and Business Report」を発表。自然環境にプラスの影響を与える農林水産業を目指すことで、2030年までに新規雇用が1.91億人、利益創出効果も3.6兆米ドルあると試算している。

【参考】【国際】世界経済フォーラム、自然環境にプラスの経済への転換を提言。雇用創出効果2030年までに4億人(2020年7月20日)

 今回の発表は、「Future of Nature and Business Report」の中で、インフラ開発について分析した結果をあらためて強調したもの。都市は、二酸化炭素排出量の75%を占め、人間の健康に影響を与える土地・水・大気汚染の主な原因となっていることをあらためて指摘。多くの都市では、都市計画が不十分なため、時間の浪費、燃料の浪費、大気汚染等が、GDPを5%低下させていると課題の必要性を唱えた。その上で、新型コロナウイルス・パンデミックからの経済復興期に検討されているインフラ開発等において、「自然ポジティブ」を志向することで、今後30年から50年、都市社会・人間・自然環境の面で大きなプラスの影響を与えることを示した。

 同レポートでは、すでに「自然ポジティブ」型のインフラ開発を進めている都市として、ケープタウン、シンガポール、蘇州、サンフランシスコ、フィリピン諸都市を例として紹介ている。

 ケープタウンでは、水系の再生等、自然インフラ構築により、年間500億lの水を創出。これは、同都市の水需要の18%に相当し、淡水化や地下水探査、水の再利用等、他の水供給手段の10%のコストで実現できることが判明している。

 シンガポールについては、飲料水供給ラインにセンサーを導入したことで、他の主要都市と比べ漏水率が大幅に低い5%を実現している。地域の漏水発生を減少することで、2030年までに世界全体で1,150億米ドル(約12兆円)の節約になり、投資収益率は20%を超える可能性がある。

 中国・蘇州では、蘇州工業園区のグリーン開発で、GDPが260倍に増加した。同工業園区では、土地利用の最適化と強化、水と環境保護の改善、グリーンビルディング建設等、グリーン開発政策等、122個の方針が定められている。工業用水の94%は再利用され、新築物件の100%がグリーンビルディング。主なエネルギー源は再生可能エネルギーで、都市の45%は緑地。同工業園区には現在、2.5万社がオフィスを設置しており、そのうち92社はフォーチュン500企業。居住者も80万人いるという。

 サンフランシスコでは、新設の建物には屋上緑化を義務化。屋上緑化市場は2020年、90億米ドル(約9,500億円)と推定され、2030年まで毎年150億米ドル(約1.6兆円)規模の成長となる可能性があるという。

 気候変動に対して最も脆弱な国の1つであるフィリピンでは、沿岸部の生物多様性やマングローブの喪失により、洪水危険地域の居住者3憶人が洪水およびハリケーンのリスクを大幅に増加。同国では、修復保険サービス会社(RISCO)設立によるマングローブの収益化プロジェクトを実証しており、マングローブが洪水軽減効果をもたらす場所を特定し、その価値をモデル化した。保険会社等は年会費を支払って同プロジェクトを推進するとともに、ブルーカーボンクレジットの販売でも収益を得ている。人間の居住地のマングローブを修復・保護することは、世界の沿岸資産への洪水被害額を820億米ドル(約8.6兆円)以上低減できると試算している。

 同レポートは、オフィス利用面積の改善等にも触れている。新型コロナウイルス・パンデミックに伴い、リモートワークが急増した結果、営業時間中に利用されていないオフィスの床面積は、世界全体でスイスの国土面積に相当する400億m2になると推定。オフィススペースの必要性は、将来に向けて減少する可能性を示唆した。さらに、政府の役割として財政出動による企業支援を挙げた。

 また世界経済フォーラムのプラスチック問題対策イニシアチブ「Global Plastic Action Partnership(GPAP)」は9月24日、2020年の年次インパクト報告書を発表した。

 インドネシアでは、政府が世界経済フォーラム及びGPAPと協働した結果、2025年までに海洋プラスチックを70%削減するという高い政策目標をが発表。

 ガーナでも、環境・科学技術・イノベーション省とGPAPが協働し、プラスチックで100%サーキュラーエコノミー化を実現する政策目標が掲げられ、現在GPAP、国連工業開発機関(UNIDO)、地球環境ファシリティ(GEF)から総額7,700万米ドル(約81億円)の支援を得た。

 ベトナムも同様に2030年までに海洋プラスチックを75%削減する目標を政府が発表。インドネシアで得られた知見も活用しながらGPAPとの協働を進めている。

 GPAPは、2018年夏に発足。カナダ政府、英環境・食糧・農村地域省、ペプシコ、コカ・コーラ・カンパニー、ネスレ、ダウの6者が活動資金を拠出。モルガン・スタンレー、SAP、サントリーホールディングスも加盟した。2019年からはインドネシアとガーナ、2020年にはベトナムの政府がGPAPとの協働を実施している。

【参照ページ】Rebuilding Cities to Generate 117 Million Jobs and $3 Trillion in Business Opportunity with Nature-Positive Strategy
【参照ページ】Ghana, Indonesia, Viet Nam on Leadership Track in Fight Against Plastic Pollution

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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