国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は9月19日、米財務省の金融犯罪取締ネットワーク部局(FinCEN)に金融機関が提出した不審行為報告書(SAR)を独自ルートで入手し分析した結果を公表。金融大手が1997年から2017年までにマネーロンダリング行為が多数発生していた疑いがあることがわかったと発表した。これにより、9月21日の株式市場では金融大手の株価が急落した。
今回の調査の基となった通称「フィンセン文書」は、金融機関がFinCENに提出した2,100以上のSARで構成されている。SARは、銀行の内部調査でマネーロンダリング行為の疑いが見つかった場合に、FinCENに提出が義務付けられているもので、必ずしもマネーロンダリングがあったことや、銀行が幇助していたことを示すものではない。
今回の一連の調査は、米オンラインメディアBuzzFeed Newsがフィンセン文書を入手したことが契機となった。入手経路は明らかにしていないが、内部リークされたものとみられている。その後、ICIJが、BuzzFeed Newsの他、88ヶ国108のメディアパートナーとともに総勢400人のジャーナリストで、16ヶ月をかけ内容を分析してきた。フィンセン文書には、金融機関がFinCENに提出した2,100以上のSARが記載されており、ジャーナリストらは、分析の過程では、その他の内部リーク文書や、裁判資料、司法当局や犯罪被害者等から数百人のインタビューまで含めた関連調査も実施した。
今回のICIJの発表では、1999年から2017年までに金融機関がマネーロンダリングの疑いがあるとする取引が2兆米ドル(約210兆円)あり、170ヶ国以上の取引顧客に関与を示すフラグが立てられていたという。さらに、JPモルガン・チェース、HSBC、スタンダードチャータード、ドイツ銀行、バンク・オブ・ニューヨーク・メロンの5社に言及し、米当局が防止体制の不備で罰金を命じた後も、マネーロンダリング行為を放置していたという。
また発表の中では、JPモルガン・チェースは、ベネズエラ、マレーシア、ウクライナの政府関係者の不正送金に関与しており、またHSBCは米裁判所から5年の執行猶予を与えられている期間中もマネーロンダリングを続けていたと伝えた。また、バルト三国とのつながりのある実態の掴めない9法人が、英国企業法の規制の穴を活用し英国でペーパーカンパニーを2,447社設立し、その法人でバルト三国の銀行に口座を開設している手口があったことも公表した。一方、JPモルガン・チェースやHSBCは、組織的な不正関与については否定している。
ICIJは今回の調査結果を米司法省及び米財務省に照会しており、司法省からは調査内容を支持するとのコメントを得ている。
ICIJは、マネーロンダリング行為の幇助の有無にかかわらず、金融機関がマネーロンダリングを防げていないことそのものが重大な問題と指摘した。また、金融機関は、SARを提出すれば、対策強化を免れられる制度になっている現状を深刻な欠陥と明言。今回明るみに出たフィンセン文書は、2011年から2017年までに提出された1,200万件のSARのうちのわずか0.02%にすぎず、マネーロンダリングを防ぐ努力が欠けていると批判した。
【参照ページ】About the FinCEN Files investigation
【参照ページ】An ICIJ Investigation FinCEN Files
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