国連グローバル・コンパクト(UNGC)、CDP、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)の4者が運営する気候変動に関する科学的根拠に基づく削減目標イニシアチブ(SBTi)は9月14日、企業向けに二酸化炭素排出量ゼロを指す「ネットゼロ(カーボンニュートラル)」の定義を明確化したレポートを発表した。
今回の発表の背景には、気候変動対策で企業が株主や他のステークホルダーに自社のアクションをアピールする動きが広がる中、「ネット・ゼロ」という単語を安易に用いることで、「グリーンウォッシュ」を引き起こす懸念が生まれていたため。SBTiを運営しているNGO4団体としても、低い水準での「ネットゼロ」乱用が広がると、国際社会に必要な気候変動緩和を実現できなくなる危機感を抱いていた。
今回策定の定義は、CDPが担当。企業が「ネットゼロ」を標榜する際の条件として、「1.5℃目標を達成できるために必要な排出削減と整合性のある形で脱炭素化への深化をリードしなければならない」「大気中に排出することが避けられない残存二酸化炭素排出量と同等の温室効果ガスを大気中から除去することで、インパクトを中立化しなければならない」の双方を満たさなければいけないとした。
カーボンオフセットについては、自社やサプライチェーンでの削減量確保のために用いるものを「補償」、自社やサプライチェーン内外で吸収・除去のために用いるものを「中和化」と呼び概念を区別した。その上、「ネットゼロに向かう過程」においては、オフセット資金が他の削減活動に貢献するため、補償と中立化のカーボンオフセット活用の双方を可とした。但し、補償型のオフセットでは、排出量を自社及びサプライチェーンの外側に転化したことにすぎず地球の排出量そのものを減らす効果は生まないため、前述の2番目の条件にあったように、「ネットゼロ」においては、中立化型のオフセットのみを可とした。
ネットゼロについては、機関投資家の気候変動アクション・イニシアチブClimate Action 100+が同日、ターゲットとしている上場企業161社のCEO及び取締役会議長に対し、二酸化炭素ネット排出量ゼロ(カーボンニュートラル)のための戦略と目標の発表を要求する書簡を送付している。ここでの定義にも、今回SBTiが発表したものが活用される予定。
【参考】【国際】機関投資家団体Climate Action 100+、161社にカーボンニュートラル要求。日本企業も10社対象(2020年9月15日)
[2021.10.29修正]
表現を一部、修正した。
【参照ページ】RELEASE: Science Based Targets initiative launches process to develop first science-based global standard for corporate net-zero targets
【レポート】FOUNDATIONS FOR SCIENCE-BASED NET-ZERO TARGET SETTING IN THE CORPORATE SECTOR
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