製薬世界大手スイスのノバルティスのノバルティス財団とIT世界大手米マイクロソフトは9月9日、新型コロナウイルス・パンデミックやその他の医療課題への今後の対策のため、データや人工知能(AI)を活用した医療システム・インフラ整備への投資が重要とするレポートを発表した。
今回発表のレポートは、国際電気通信連合(ITU)と国連教育科学文化機関(UNESCO)が共同運営する「持続可能な開発のためのブロードバンド委員会」の「医療のデジタルとAIワーキンググループ」が作成。同ワーキンググループの共同議長をノバルティス財団とマイクロソフトが務めており、今回、ヘルスケア業界での人工知能(AI)の活用に向けたロードマップを策定した。
同レポートは、AI活用の優先順位の高い分野として、(1)公衆衛生、(2)臨床前研究と臨床試験、(3)クリニカルパス、(4)ヘルスケアサービス提供チャネル、(5)医療運営の最適化の5つを提示した。
またヘルスケア領域全体でのAI活用を進めていく観点として、「職場」「データ&テクノロジー」「ガバナンス・規制」「設計・プロセス」「パートナーシップ&ステークホルダー」「ビジネスモデル」の6つを置いた。
ヘルスケアでのAI活動の市場規模では、ハードウェア、サービス、ソフトウェアの3領域で、2019年から2025までに7倍に拡大し、350億米ドル規模になるとの見通しを示した。投資効果となる付加価値としては2030年までに3,000億米ドルを目指す。
また同レポートでは、ヘルスケア業界における人工知能(AI)活用事例300件に基づき、同技術がすでにヘルスケア業界に破壊的な革新を起こしていると分析。同ロードマップとしては、人工知能(AI)の活用の可能性についても、受動的なものから、能動的、さらには予測的、予防的なものへとつなげていきたいと意気込みを話した。
加えて、現在のパンデミックへの対応に関するAI活用にも触れた。ヘルスケア業界がデータに依存していることが今回のパンデミックでも明確になったが、ほとんどの国では、まずデータ作成や利用可能なデータセットの構築が必要な状態。投資を行わず、国民の健康格差をさらに拡大する政府もいるという。特に低中所得国(LMICs)では、医療従事者の不足、医療サービスの行き届いていない国民、急速な都市化、偽情報(フェイクニュース)等、全体的な健康課題を抱えており、人工知能(AI)活用に伴う便益も損失も非常に大きいと指摘した。
低中所得国(LMICs)の中には、ヘルスケアのために人工知能(AI)を活用し、世界を牽引する事例も多くある。例えば、ルワンダのヘルスケアに関する仮想コンサルティングサービス利用者は、成人人口の3分の1に到達。インドの病院では、人工知能(AI)の活用により、心臓発作のリスクを発症の7年前に予測することができる。
また、高所得国でも、人工知能(AI)の活用からの気付きは多くある。例えば、医療機関従事者の不足は世界的な課題となっており、2030年までに1800万人規模の人材不足が懸念されるが、こうした課題は、人工知能(AI)への投資に繋がる可能性が高いと分析。医師に代替するものではないとしつつも、ビッグデータ処理等で人間を補完し、より正確な診断を支援するとした。
【参照ページ】New report shows how AI in health is critical for COVID-19 response and recovery
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