商船三井は9月11日、インド洋の島嶼国モーリシャスの南東沖で商船三井が運航していた長鋪汽船のばら積みタンカー「わかしお」が座礁した事件で、複数年で総額10億円の支援策を発表した。長鋪汽船と商船三井に対する損害賠償の協議が進む中、特に上場企業の商船三井の対応に注目が集まっている。
【参考】【モーリシャス】商船三井の運航船、ラムサール条約保護湿地地域で座礁。同国史上最大の海洋汚染と警鐘(2020年8月8日)
【参考】【モーリシャス】グリーンピース、座礁事故で商船三井と長鋪汽船に独立調査と完全な損害補償を要求(2020年8月20日)
【参考】【日本】商船三井、モーリシャス事故責任で「傭船者として法令に基づき」を強調。失望広がる(2020年8月22日)
今回同社はこれまで、グループ企業の社員13人を現地に派遣し、損害賠償に関連する対応協議とともに、流出油の回収除去作業に有用な資材他の支援物資の提供及び輸送も実施。また日本の環境省が、モーリシャスに職員を派遣し自主的に援助活動をしていることもあり、同社もそれとの連携をアピールしている。
今回の発表では、モーリシャス自然環境回復基金を創設し、発起人として数年間に亘り8億円程度の拠出。長鋪汽船も拠出の意向を示しており、基金の運営は日本総合研究所が担う。また、マングローブ林、サンゴ礁、海鳥の保護でも、モーリシャス大学や専門機関と協働する考え。
さらに、現地で活動する環境NGOや、モーリシャス政府が設立した漁業従事者への支援基金および支援団体に対し、合計で1億円程度を拠出する。漁業事業者や観光業に対する支援については今後さらに検討するという。
また、モーリシャス駐在員事務所を設置するとともに、毎年世界各地の社員を数名選抜し、モーリシャスで環境に関する研修を実施することも打ち出した。
今回の事件での被害総額と損害賠償金額はまだ未定。観測では、船舶事故の損害保険の役割を果たす「国際P&Iグループ」の負担限度額10億米ドル(約1,100億円)を上回るとの観測も出ている。それを上回る額については、長鋪汽船と商船三井に支払責任が及ぶが、商船三井は、賠償責任は船主である長鋪汽船側にあるとのスタンスを示唆する声明を相次いで行っている。
今回の10億円の支援が、同社の対応として十分といえるか否かは、今後の損害賠償協議の全体の中で評価していく必要がある。モーリシャスでは、新型コロナウイルス・パンデミックでの観光客激減で大きな打撃の中、さらに事故により観光業と漁業に悪影響が出ていることで、8月29日に大規模なデモが発生。内閣の総退陣を求める声が市民から上がっている。
【参照ページ】WAKASHIO号事故に関するモーリシャスの環境回復・地域貢献に向けた当社の取り組みについて~モーリシャスと共に~
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