住友商事は9月4日、間接子会社Summit Discovery Resourcesが保有していたマーセラス・シェールガス開発プロジェクトの約30%の権益全てを売却した発表した。同権益は同社が保有していた唯一のシェールガス開発プロジェクトで、シェールガス開発から完全撤退することとなった。
2010年前半から巻き起こった米国のシェールガス開発ブームでは、テキサス州のバーネット・シェールと、ニューヨーク州からペンシルベニア州、ウエストバージニア州等の複数の州に跨るマーセラス・シェールが特に有名。
住友商事は2010年9月、住友商事が70%、米州住友商事会社が30%を出資しているSummit Discovery Resources IIを通じ、米国の独立系石油ガス開発Rex Energyが開発していた天然ガス開発プロジェクトに参画。Rexの既存資産と新規リース権の約30%を合計1億9,400万米ドルで取得し、同社のシェールガス開発の象徴となっていた。
しかしガス価格の減少により、シェールガスはその後も収益性が課題となっていた。同プロジェクト関連でも、2018年にRexが倒産し、プロジェクトの権益はPennEnergy Resourcesに売却。さらに新型コロナウイルス・パンデミック後にガス価格は急落し、倒産の危機に瀕するプロジェクトが増えていた。
今回、住友商事は、百数十億米ドルで同権益を売却。売却先は公表していないが、購入価格と比べても数十億の投資ロスが出た形。一方同社は、テキサス州ではデボン・エナジーが運営するタイトオイル開発プロジェクトに30%を出資している。
マーセラス・シェールの別のプロジェクトでは、三井物産と三井石油開発の合弁会社Mitsui E&P USA(MEPUSA)が、Anadarko Petroleumが運営するシェールガス開発プロジェクトの権益約15.5%を2010年に14億米ドルで獲得。しかし2016年に14.3%分をAlta Resources Developmentに2億700万米ドルで売却していた。
三菱商事も2016年2日、2010年に360億円超で購入したカナダのシェールガス鉱区5割分の権益を売却したと発表し、投資ロスを計上。今でもモントニー・シェールガス開発プロジェクトの40%権益を保有している。丸紅も2018年に赤字を出した上で一部権益を売却し、今でも事業赤字が続いている。伊藤忠商事は2015年に赤字を出した上でシェールガス開発事業から撤退した。
当時の喧伝とは裏腹に、シェールガス開発プロジェクトは、大きな収益を生むどころか、損失を出すプロジェクトになってしまった。今後、気候変動による化石燃料ダイベストメントの動きから、シェール開発プロジェクト事業の見通しは厳しい見方が多くなっている。
【参照ページ】米国マーセラス・シェールガス開発プロジェクトの資産売却について
【参照ページ】米国におけるマーセラス・シェールガス開発プロジェクトへの参画の件
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