グリーンボンドの国際基準策定NGO気候債券イニシアチブ(CBI)は9月8日、クレディ・スイスと協働で、トランジションボンドに代表されるような「トランジション」概念と既存の「グリーン」概念の基準に関するドキュメントを発表した。グリーンボンドに対するCBI認証を運営しているCBIとして、「トランジション」の考えをまとめたものとなった。
「トランジション」という単語は、気候変動緩和を進めるための「エネルギー転換」等で頻繁に使われる「転換」概念のこと。だが、債券等で「トランジション」を用いる概念は必ずしも統一しておらず、特に「グリーン」とは呼べないまでも一定の「転換」効果があるものを資金を使途とする「トランジションボンド」が自然発生的に登場したことで、一部の関係者の間では「グリーンウォッシング」ではないかという批判の声も上がっていた。
そこで今回CBIは、グリーンとトランジションの定義を以下のようにまず定めた。
- グリーン:パリ協定と整合性のある低炭素経済に向かう上で長期的な役割が期待されるもの
- トランジション:2030年までの排出量半減及び2050年までの排出ゼロを実現するが長期的には重要ではなくなるもの、もしくは長期的に重要だが現時点で排出ゼロ化していけるか不確かなもの
その上で、気候変動緩和に資するアクティビティのレベル感を5段階に区分けし、それをもとにグリーンとトランジションを分類する手法を採った。また、今回のトランジションとグリーンのフレームワークは、債券だけでなく、融資、株式、資産担保証券(ABS)にも適用できるものとして設計。さらにプロジェクト単位と法人単位の双方で基準を設定した。
気候変動アクティビティの5つのカテゴリー
- ほぼゼロ:アクティビティでの二酸化炭素排出量がすでにほぼゼロもしくはゼロのもの(例.風力発電)
- ゼロへの道:1.5℃目標と整合性がある削減を実現するための潜在的手法がすでに見えており、カーボンニュートラルを実現する2050年以降も必要とされるもの(例.海運)
- ゼロへの道ではない:1.5℃目標と整合性がある削減を実現するための潜在的手法がまだ見えていないが、2050年以降も必要とされるもの(例.長距離フライト)
- 暫定:今は必要とされているが、2050年以降は不要となるもの(例.ごみ発電)
- 座礁:パリ協定と整合性がなく、すでに代替物があるもの(例.石炭火力発電)
まずプロジェクト単位では、
- ほぼゼロ:グリーン
- ゼロへの道:グリーンもしくはトランジション(ケース・バイ・ケース)
- ゼロへの道ではない:トランジション
- 暫定:トランジション
- 座礁:該当なし
続いて、資金使途を限定できない株式等に対して用いられる法人単位の基準では、
- ほぼゼロ:グリーン
- ゼロへの道:グリーンもしくはトランジション(いずれでも可)
- ゼロへの道ではない:該当なし
- 暫定:グリーンもしくはトランジション(いずれでも可)
- 座礁:該当なし
【参考】【フランス】クレディ・アグリコル、トランジションボンド120億円発行。アクサIM向け私募債(2019年11月29日)
【参考】【国際】サステイナリティクス、トランジションボンドのSPO提供開始。業種毎に独自基準設定(2020年6月8日)
【参考】【スイス】クレディ・スイス、35兆円のサステナブルファイナンス目標発表。化石燃料ファイナンス規制も強化(2020年8月1日)
【参照ページ】Climate Bonds Initiative and Credit Suisse publish - Financing Credible Transitions - White Paper
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