日産自動車は9月3日、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製部品の量産化レベルを上げるシミュレーション技術と生産技術を開発したと発表した。炭素繊維は、強度、軽量、剛性の性能が高く、鉄等の代替素材として期待されているが、高コストのため活用が難しかったが、今回の新技術により可能性が大きく開ける模様。
同社が今回開発したのは、金型内における炭素繊維への樹脂の含浸度合いを精確にシミュレーションする技術と、CFRP製部品を成形するための新たなC-RTM工法(金型を閉め切らず隙間を作った上で樹脂を注入し炭素繊維に含浸させる工法)という生産技術の2つ。前者では、同部品の開発期間を約50%短縮。後者は、従来のRTM工法に対し成形時間を約80%短縮できるという。
高品質なCFRP製部品の成形では、従来は、炭素繊維を部品の形状に整え、金型にセットした後に樹脂を注入し、繊維に均一に含浸、硬化させる必要があった。しかし、含浸に最適な部品形状や金型を設計するため、樹脂の流れを確認しながら何度も金型を試作する必要があり、コストが高くなる原因にもなっていた。
そこで同社は、金型の試作回数を最少化するため、金型内への温度センサーの設置や透明な金型の採用等により、金型内の炭素繊維間の隙間を流れる樹脂の流れを可視化することに成功。可視化した樹脂の流れから、炭素繊維への樹脂の含浸度合いを高精度にシミュレーションする技術を開発した。
また、高精度なシミュレーション結果に基づき最適な形状のビード(溝)を炭素繊維の繊維方向に沿って金型内の最適な位置に配置することで、炭素繊維へ樹脂を効率的かつ均一に含浸させる生産技術も開発できた。
同社は、2024年から2025年に販売する新型車で、新技術を用いたCFRP部品を採用する予定。車両一台当たり約80kg軽量化できる見込み。
【参照ページ】車体軽量化に向けた炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化技術を開発
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