国連開発計画(UNDP)とストックホルム国際水協会(SIWI)が共同運営する発展途上国の水対策支援組織Water Governance Facility(WGF)と、ストックホルム環境研究所(SEI)の研究者は5月25日、気候変動によるトイレ・下水対策に必要な投資が大きく不足しているとする論文を発表した。
今回の論文は、科学誌「Nature」で発表された。気候変動対策では、気候変動緩和と気候変動適応の2つがあるが、今回双方について衛生分野での対策状況を分析した。
国連持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット6.2では「衛生設備へのユニバーサルアクセスの達成」が掲げられているが、現在、屋内トイレにアクセスできない人が13億人おり、また衛生施設が完備されていない人まで含めると56億人に衛生設備へのユニバーサルアクセス対策が必要となっている。
その上、気候変動により、水循環の異変、気候変動による異常気象等での衛生設備へのアクセス、清潔な水へのアクセス悪化が懸念されており、先進国において衛生設備へのユニバーサルアクセス維持のためには、新たな対策が不可欠となってきている。実際に日本でも2019年の台風では、タワーマンションでトイレが使えない状態が発生している。さらに水不足の状態で、排泄物の運搬や処理についても課題が出てくるおそれがある。
一連の下水施設で使われている電力は、電力消費量全体の約3%にものぼる。また下水過程で出るメタンガスや一酸化窒素等は気候変動の原因にもなっており、GHG排出量全体の1.57%にものぼるという。
しかし、パリ協定での各国の気候変動対策行動計画(NDC)について、水・衛生に関する対策は全体の9%にすぎず、さらに水・衛生の分野での対策でも、多くは水へのアクセス、灌漑、水マネジメントに向かっており、衛生へのアクセスはわずか2%、下水マネジメントでも3%しかなく、課題としての認識が不足していると指摘した。また気候変動適応に言及していても、気候変動緩和の観点でのアクションがほとんど設定されていないことも問題視した。
特に衛生と下水に関しては、発展途上国での気候変動適応の観点ではNDCにアクションが定められていても、先進国では触れられていないという。
同論文は、衛生と下水分野にも大規模な投資が必要と指摘し、気候変動ファイナンスにおいても衛生・下水への関心を高めるよう促した。
【参照ページ】Sustainable sanitation and gaps in global climate policy and financing
【参照ページ】Sustainable sanitation and gaps in global climate policy and financing
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