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【国際】グリーン水素市場、2020年代に大きく躍進。欧州、オーストラリア、中国が牽引。日本は遅れ

 米エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)は8月24日、2030年頃までに再生可能エネルギー電力での水電気分解で水素を生産する「グリーン水素」の生産が大きく伸びるとの予測を発表した。欧州、オーストラリア、中国で大規模プラントの着工が始まっており、市場を牽引する見込み。このままでは日本の存在感は非常に小さくなるおそれがある。

 IEEFAの調査によると、2019年だけで世界でグリーン水素プロジェクトが50件発表された。そのうち、EU・英国・ノルウェーで16件、中国が11件、オーストラリアが10件で、この3地域だけで37件と大多数を占める。この3地域のプロジェクト計画の規模は大規模化しており、各々、大手プレーヤーが動き出している。他にも、サウジアラビアでも大型案件が始動している。

 大型案件では、北京京能清潔能源が中国で2022年に年間18.3万tのプラントを、サウジアラビアではNEOMが年間20.7万tのプラントを2025年に、英国ではH2H Saltendが年間12.5万tのプラントを2026年に、オーストラリアでは56.2万tのプラントを2027年に運転開始を計画している。

 水素の生産では、世界的に普及している現行法は、石炭やガスの改質による水素抽出で、生産工程で二酸化炭素を排出してしまう。一方、目下、研究開発が進められているのは、再生可能エネルギー電力を活用した水電解で水素を抽出する「グリーン水素」と、石炭やガスの改質だが炭素回収・貯蔵(CCS)設備を備えることで発生する二酸化炭素を吸収する「ブルー水素」の2つ。

 EUは7月に「EU水素戦略」を採択し、2030年までに1000万tの生産能力を確保し、グリーン水素に集中することを明言。世界の水素生産を牽引する姿勢を明確にした。化石燃料改質での水素生産で世界をリードするオーストラリアも、グリーン水素への関心を高めている。

【参考】【EU】欧州委、「EU水素戦略」採択。再エネ電力での水電解式の水素戦略に注力。2030年までに1000万t(2020年7月10日)

 アジアでは、日本、韓国、中国ともに、化石燃料改質でのブルー水素を主眼に据えてきたが、中国では再生可能エネルギーが大幅に普及してきており、グリー水素でも大型プロジェクトが続々と登場。欧州を追う勢いを見せている。

【参考】【韓国】国家水素戦略で、グリーン水素生産コストが2030年までに半減。ウッド・マッケンジー予測(2020年8月24日)
【参考】【中国】石炭採掘大手・宝豊能源、世界最大級のCO2フリー水素製造プラント建設開始。CO2削減(2020年5月5日)

 IEEFAによると、日本政府と韓国政府の水素戦略では、日本では2050年までに水素需要を年間100万t、韓国は170万tを目指しているが、EU全体の半分にも満たないという。韓国でも、文在寅大統領が、産業を2050年までに水素経済化する「水素戦略」を打ち出してきており、危機感を強める。

 日本では、現在、グリーン水素プラント「福島水素エネルギー研究フィールド」が2020年2月に稼働を開始。それ以外では海外で生産されたブルー水素の輸入を進めている。日本の水素産業は、大きく遅れてきている。

 IEEFAは、グリーン水素の需要は2030年までに世界で年間870万tに達する見通しなのに対し、生産量は300万tにとどまる見通しで大幅な供給不足が懸念されている。そのため政府への資金支援を促した。

 英エネルギーリサーチ大手ウッド・マッケンジーは8月20日、2040年までにグリーン水素の生産価格は64%削減されるとの見通しを示した。

【参照ページ】Great Expectations
【参照ページ】Hydrogen production costs to 2040: Is a tipping point on the horizon?

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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