米ドナルド・トランプ大統領は8月8日、新型コロナウイルス・パンデミックに対する経済支援策として、給付の上乗せ等を実施する4つの大統領令に署名した。連邦議会で共和党提議の支援策が民主党の反対で進まないことを受け、大統領令の形で緊急歳出を決定した。
同大統領は、連邦議会が決定した支援策は、すでに失効しているか、近々失効期日を迎えるとし、今回の大統領令の正当性をアピール。法的根拠としては、スタフォード法(災害救援・緊急支援法)、3月に自身が布告した新型コロナウイルス非常事態宣言を挙げた。財源については、3月に成立したCARE法で地方政府向けに用意された新型コロナウイルス救済基金(CRF)の予算残り800億米ドル、スタフォード法のもとで活用できる積立金880億米ドルのうち440億米ドル、国家安全保障省の災害救済基金(DRF)の積立金700億米ドルのうち250億米ドルを合法的に動員できるとした。
【参考】【アメリカ】新型コロナで240兆円の経済対策法成立。資金注入受けた大企業は自社株買い禁止・配当ゼロ(2020年3月29日)
今回の大統領令は、3つの官庁向けの指示書である「メモランダム」と、1つの行政命令である「エグゼクティブ・オーダー」で構成しており、双方とも「大統領令」と呼ばれている。まず、7月末まで週600米ドルを特別上乗せしていた失業給付を、新たに8月1日から週400米ドルと減額しながらも上乗せ措置を継続する。そのうち連邦政府が300米ドル分を、州政府が100米ドル分を負担する。
一方、州政府からは、連邦議会に対し追加で5,000億米ドルの追加資金を要請している。民主党はこれに応じるべきだとしているが、与党の共和党は、財政が適切でない州政府を救済すべきでないとして、大規模な予算動員には反対。これにより連邦議会での審議が滞る結果となっている。今回の決定についても、州政府の財源では支えきれないとの声も出ている。
2つ目は、給与税の納税猶予。年収が104,000米ドル未満の人を対象に、6.2%の社会保障税と1.45%のメディケアの納付期限を12月31日まで延期する。トランプ大統領は、秋の大統領選挙で再選されれば、給与税の減額もありうると有権者にアピールした。
3つ目は、学生ローンの返済猶予の延長。現在すでに9月30日まで連邦政府運営の学生ローンの返済を猶予し、その期間の金利も0%としているが、その措置を12月末まで延期する。民主党は、同措置を来年も継続することと、民間の学生ローンについても同措置を適用することを求めていた。
4つ目は、住宅の強制立ち退きの防止の支援。3月制定のCARE法では、立ち退き禁止を定めたが、7月に措置が失効。今回、家賃支払いができなくなった人への立ち退き防止のための何らかの支援を検討するよう住宅都市開発省や財務省に命じた。但し、対象は、連邦政府の保証付きローンの適用利用者のみで、全体で1,200万世帯しか恩恵に預かれないという試算もある。
今回、民主党の反対を押し切る形で、大統領令の形で経済支援策を決定した。民主党は越権行為と反発を強めている。
【参照ページ】Memorandum on Authorizing the Other Needs Assistance Program for Major Disaster Declarations Related to Coronavirus Disease 2019
【参照ページ】Memorandum on Deferring Payroll Tax Obligations in Light of the Ongoing COVID-19 Disaster
【参照ページ】Memorandum on Continued Student Loan Payment Relief During the COVID-19 Pandemic
【参照ページ】Executive Order on Fighting the Spread of COVID-19 by Providing Assistance to Renters and Homeowners
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